DX Lab Blog

当当社のリサーチ・シンクタンク部門である「DX Lab」のメンバーのブログです。
デジタルトランスフォーメーションに関わるトレンドを発信しています。

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DX実現に向けての取り組みと今後の展望 第2回 ~コンサルティングの現場から見えてきた4つの課題~

皆さんこんにちは!DX Labの板倉です。

数回にわたってUPさせていただく「DX実現に向けての取り組みと今後の展望」の第2回。
第2回のテーマは、「コンサルティングの現場から見えてきた4つの課題」です。

ちなみに…
第1回目の「DXの基本と取り組み事例」については、以前書いた記事をご参照ください!

 

DXに取り組もうとする企業が多い一方、成果を出すに至っていない企業が多いという現実があります。DXを推進するにあたり、企業がどのような課題を抱えているのか、成果を出すために必要な取り組みとは何なのでしょうか。
今回、数々の企業を見てきたBAのコンサルタントに社内インタビューを行い、そこから見えてきた実情も交えつつ、2回に分けて見ていきます。

 

DXの現状

DXに取り組んでいる企業の現状はどうなっているのでしょうか。95%の企業が頓挫しているという調査結果(スイスIMDビジネススクールのMichael Wade教授が公表)もあります。
現状は、「取り組み始めた段階」というフェーズの企業が多いとも言えそうです。

そもそもDXは、データやデジタル技術を活用してビジネスモデルを変革すること、顧客への価値提供のあり方を大きく変えるという意味を含んでいます。

つまり、中長期的に取り組んでいく必要があります。
そのため、現時点では多くの企業で成果が出ていない、という調査結果とも通じてきます。

 

多くの日本企業は、3~5年単位で中期経営計画(以下、中計)を策定しています。
その中計にDXに関する記載が増えていることも、この数年で取り組みを強化し始めた企業が多いことを物語っています。

※中計の在り方にも批判的な意見があります。
コロナ渦で露呈したように、昨今不確実性が増しています。今後は3~5年先を予想することが一層困難になります。
中長期的なビジョンや自社の存在意義を明確にし、より短い時間軸で区切って実行・検証していく必要があると言えそうです。

 

企業が抱える課題

では、DXを推進するうえで、企業はどのような課題を抱えているのでしょうか。
複合的な要素がありますが、ここでは以下の4点に大別しました。

  1. 経営層のリーダーシップ、認識の欠如

  2. DX/IT人材不足

  3. 既存システム(データ)のサイロ化

  4. (DXの文脈における)事業の再定義がされていない

それぞれどのような課題があるのか、見ていきましょう。

 

1.経営層のリーダーシップ、認識の欠如

DXを推進するうえで前提となるのが、経営層のリーダーシップや認識の問題です。
大規模な企業では、組織階層が深くなっています。事業部制を採っている場合、各事業部の傘下に本部や部、課などがぶら下がっていることが多いです。そうした組織をまとめ、全社を引っ張っていくことができるのは経営層、リーダーの役割です。

経営層に、DXの必要性の認識やIT・デジタル技術の知見がどの程度備わっているかによって、全社的な取り組みが加速するか、停滞するか、変わってきます。昨今では、CDO(Chief Digital Officer)という役職を設け、リーダーを置いて横串でデジタル化を推進しようという動きがみられますが、日本企業はなかなかCXOが機能しづらいという現実があります。

DXが日本で一般化したのは2018年頃(経産省のDXレポートが一つのきっかけ)ですが、欧米ではそれ以前から多くの先進企業がDXに取り組んでいました。もちろん業種や企業規模によって差はありますが、これからDXに取り組もうとしている時点で欧米の先進企業とは周回遅れになっているのです。(周回遅れ程度ではないかもしれません…)

 

BAにいただくご相談でも、これまでは企画段階で、その第一歩としてようやくMA(マーケティング・オートメーション)を導入しようというお話があります。MA自体がマーケティング効率化のツールに留まらずDXの一部と位置付けられることは非常によいことですが、DXの最終形(ビジネスモデルの変革/顧客価値のあり方の大幅な変化)への道のりを考えると、かなりのスピードアップが必要といえるでしょう。

 

2.DX/IT人材不足

2つ目の課題は人材不足です。当社にご相談いただくDXの課題のなかでも、どうしても社内のスキルの補完に関わるご相談が増えています。経産省が2018年に発表したDXレポートによると、「2025年にはIT人材不足が約43万人に拡大する」とされています。現に人材の争奪戦が起こっているともいわれており、それを現場で実感しています。

【参考】日経ビジネス(2020年7月17日付)
「コロナ下でも欲しい人材 引く手あまたの職種・経歴」
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO61441080T10C20A7000000
(2020年9月22日参照)

 

一方、外部人材の獲得は当然限界があるため、社内で育成しようとする動きも活発化しています。
日立製作所は2020年4月からDXへの対応策として国内グループ全16万人を対象に専門研修を始めていますし、富士通も、2020年度より、AIやプログラミングなど約9千の無料講座を、国内のグループ全8万人が自主的に学べるよう研修体制を整備しています。

外部人材の獲得と社内での人材育成、両面で取り組みを進める必要があります。

なお、2020年9月16日に、トヨタ自動車と電通グループがDXを含めたマーケティングの変革とモビリティビジネスの創造を目的とした合弁会社を発足すると発表しました。こうした共同出資による合弁会社については、リスクを軽減できるだけでなく、相手企業の人材やノウハウなどの資産を活用できるというメリットがあり、人材確保という面からも注目されています。

 

3.既存システム(データ)のサイロ化

3つ目の課題は、既存システムやデータのサイロ化(縦割り)の解消です。
DXを推進するうえで前提となります。課題自体は以前から認識されていましたが、DXという文脈においても避けることはできません。サイロ化がなぜDXを推進するうえで障害となるのでしょうか。

DXは全社的な取り組みとして進めるものです。

多くの企業で事業部の独立採算や、カンパニー制などの権限移譲を繰り返してきたなかで、過去にはそれでよかったものが、今では足かせになっているとも言えます。サイロ化した組織では、自立性を尊重した結果、社内の組織ごとに最適化したシステム運用体制やデータ管理があり、会社全体としての横断的なシステム連携が不十分となっています。
仮に事業や地域横断的に顧客体験をデータに基づいて最適化しようとしても、会社全体としてデータを管理・活用できなければ、データを効率的に活用できず、社内システム・データを活用できている他社に後れを取ってしまいます。

 

一般的に、IT部門は重要な機能である割には、性質上、事業部門に対するソリューションの提供者として、受け身にならざるをえない立場にあります。一方の事業部門は、ITへの知見にうまくキャッチアップできていないため、実現性を欠く要望をIT部門にしてしまいがちです。そこに溝が発生してしまい、双方が一生懸命やっていてもなぜかかみ合わないという状況になってしまいがちです。

このようにIT部門と事業部との連携が不十分だと、統合の動きも進むに進めませんし、「顧客目線」が抜けてしまうことになりかねません。

こうした現状を見かね、「DX推進室」などの専門部署を設置する企業もあります。設置したものの…という事態に陥らないような仕掛けは不可欠です。

また、日本は欧米に比べデータ戦略の遅れが目立ち、保有データの多くが休眠状態になっているともいわれています。経営層の理解やデータ戦略の明確化のもとに、既存システム、データの統合への取り組みが欠かせません。

 

4.(DXの文脈における)事業の再定義がされていない

4つ目の課題は、DXの文脈における事業の再定義がされていないという点です。
いざ、DXを推進しようとしたところで、自社の提供価値の認識に社内でバラつきがあると、中長期的なビジョンを描いても絵にかいた餅になってしまいます。

自分たちは誰に対してどのような価値を提供するために存在するのか、最も大切にする価値観や理念は何なのかを改めて明確化しておく必要があります。

 

再定義した結果、必ずしも従来の延長線上に収まらないケースも出てくるかもしれません。これまでのポジショニングでは通用しなくなるかもしれませんし、いままでは考えてもいなかった企業と競合として戦うこともあり得るかもしれません。旧来の顧客を失うことになるかもしれないし、事業ポートフォリオが変わって、社内での配置展開など新たな課題が出てくる可能性もあります。

しかし、「自社×デジタル」で何を生み出すのかを真正面から考えて取り組まないと、拠り所がなくて実働部隊は安心して仕事ができません。

 

 

今回のまとめと次回に向けて

今回は、DXを推進する企業が直面している課題について、BAのコンサルタントへのヒアリング結果も踏まえ、4つの課題別に具体的に見ていきました。DXに至っていない(入り口段階)企業も多いという現実とDXを推進しているものの様々な課題にぶつかっている現状が分かりました。

次回は、課題の具体的なケースと併せ、どのように取り組めばDXで成果を創出できるのか、そのヒントを各企業の取り組みも参考にしつつ探っていきます。

 

それでは、今回はこの辺で・・・
次回以降も、よろしくお願いします!

(執筆者:板倉和司)