MOps本格化に向けたドキュメンテーションと「プレイブック」の重要性

オペレーションを浸透させるために

マーケティングツールの多様化と進化により、企業のマーケティング活動が複雑化する中、マーケティングオペレーション(Mops)を専門職として導入する企業が増加しています。
Mopsは戦略から実行に至るプロセスの効率化と最適化を目指し、プロセスの管理と改善を専門業務として行います。

この役割を担う際にポイントとなるのが、単にプロセスを構築することだけではなく、その目的を明確に伝え、運用を定着させることです。
目的が伝わらず、設計意図に沿った運用が行われないという状態を避ける必要があります。

そのため、マーケティングのゴールやビジョンを達成させるために、オペレーションがどのような目的で設計されているかを体系的に記載したドキュメンテーションが、オペレーションの定着の鍵になります。
営業を含むマーケティング関係者全員が理解できる「プレイブック」(「誰が」「いつ」「何を」するのかをルール化・戦略化したもの)のようなものを用意して、誰もがナレッジを確認できるように整えることが推奨されます。

ドキュメンテーションでおさえるべきポイント

では、具体的にどういったことをドキュメンテーションすべきでしょうか。
まず、組織全体のマーケティング戦略や目標に基づき、オペレーション設計がどのような意図で行われているかを体系的に整理する必要があります。
そのため、使用されているツールやオペレーションが目指す具体的な目的を網羅的に記述できているのが理想です。

組織の現状に応じて記載すべき内容は変わるため、一概には言えませんが、以下はドキュメンテーションに含めるべき要素の一例です。
1. 戦略 : ペルソナ定義、顧客ジャーニーのマッピングなど、マーケティング戦略の根幹をなす要素。
2. 目標 : マーケティングの目標、KPI。それらの測定方法
3. オートメーションのワークフロー : 効率的なマーケティング活動を実現するための自動化プロセス。
4. プロジェクト管理プロセス : タスクの割り当てから進捗の監視、成果物の納品に至るまでのプロセス。
5. システム・ツール : 使用するマーケティングツールやシステムの詳細。各種ツールの連携。
6. 社内コミュニケーション : 営業部門等、他部署との合意形成やコミュニケーションの方法。

プレイブックにこれらをあらかじめ明文化しておくことで、組織全体でオペレーションの設計意図を正しく共有できます。各々の業務の位置づけと重要性が明確になり、標準的で効率的な業務遂行が可能になります。さらに、人員が入れ替わった際にもナレッジが適切に継承されるため、業務の中断や非効率を最小限に抑えられます。
また、プレイブックを参照することで、個々のマーケターは自身の業務がマーケティング戦略のどの部分に位置づけられるのかを理解できます。また、ツールの機能をどのように活用すべきかが明確になり、業務の標準化と効率化が実現できます。

プレイブックの組織定着に向けた継続的な取り組み

ドキュメンテーション化を進め、プレイブックを作成することは重要ですが、作成したら終わりではありません。重要なのは、このプレイブックをいかに活用し、組織全体に定着させていくかという点です。
定着させるための具体的なポイントとしては、下記のような点が挙げられます。

1.内容を最新状態に保つ

我々を取り巻く環境や状況は常に変化を続けます。そのため、定期的に関係者と協力して内容のレビューを行い、改訂を行っていくプロセスと体制が求められます。

2.改訂内容を展開する

レビューの結果、プレイブックを更新した場合は、新しい内容を関係者へ周知していきます。関係者が少ない場合は良いですが、複数チームが運用を行っている場合などは実務担当者までは伝わっていないことなどが多々ありえます。そのため、理解促進のためのミーティング、社内ユーザ会やトレーニングの実施などの展開を念頭に置くとよいでしょう。

3.運用状況を継続的にモニタリングする(意識づけをする)

プレイブックに基づいて業務が実際に行われているかを確認し、業務の進め方に課題があればプレイブックに反映していきます。自動的に計測する仕掛けや定量的な評価は現実的に難しいと思われるため、定性的なヒアリングなどを定期的に行うなどして、「プレイブックを意識しているかどうか」「できているかどうか」という点について確認を行っていくことは重要です。またその確認により、プレイブックに対する意識づけも行っていきます。

まとめ

マーケティングオペレーションにおけるドキュメンテーション化の重要性は、その透明性と効率性にあります。
明確でアクセス可能なドキュメントを通じて、組織内の知識の共有と継承を促進し、マーケティング活動の持続可能な成果を生み出す基盤を築くことができます。
変化する環境に対応し、競争力を維持するためには、効果的なマーケティングオペレーションとその核となるプレイブックを活用していくことで、柔軟で強固なMOps体制を作っていきましょう。

記事を書いた人

大塚 友晴