全体最適DXで生じた個別課題を補完する「ノーコード」DX

全体最適で推進されたDXの難しさ

DXの推進について、デジタル化やデジタイゼーションを各部署や部門ごとにバラバラで実施していくのでは、全社的な視点から見ると、非効率であり、ガバナンスが取れないため、適切な状態ではありません。
そうした認識は広まり、多くの企業がDXを実現するために、全社的な最適化を目指したプロジェクトを全社方針として掲げ、変革を進めようとしています。
全体最適的な進め方は、効率性やガバナンスの面で必要不可欠ですが、現場の個別課題には十分に対応しきれないという問題が依然として存在します。

例えば、全社的に導入されたシステムが各部門の業務プロセスに対応しきれなかったといったケースがあります。
また、全社プロジェクトの進行速度が各部門の求める迅速な対応に追いつかなかったりといったケースもよく見られます。

全体最適を目指すDXの推進は、現場でそれぞれの業務がある以上、カバーしきれない局所的なひずみが生じてしまいます。

全体最適と個別最適のバランス

このような局所的なひずみに対して、個別最適での対応も必要になってきます。
全社的なDXプロジェクトの下で、全体最適での改革を推し進めながらも、どうしても補えない“隙間”となる個別課題に対しては、各部署・部門で個別に対応していくという形が現実的です。

全体最適と個別最適のバランスを取ることで、現場に即したDXが実現できます。

気を付けるべき点としては、勝手に進めるのではなく、全体最適の方向性と歩み寄りながら、進めることがあります。
別々で進むことが無いように、全体で進められる計画や仕組みを活かしたうえで、個別の部門で必要なことを各自で対応していくという形での推進が望ましいです。

個別最適を進めるためのノーコード開発
全体最適を補完するための、個別のDXプロジェクトを効率的に進めるには、迅速かつ柔軟に対応できる手段でなければいけません。
一からシステム開発をするとなると、費用や時間がかかってしまいますし、何より全体最適の方針に反することになります。
そうした背景を踏まえて、迅速かつ柔軟に改革をする手段として、ノーコード開発は有効かと思います。
ノーコード開発では、開発費用をかけずに、担当者レベルで、現場の課題に即時対応できる業務アプリやシステムを作ることができます。
例えば、全社で導入しているシステムはあるものの、どうしても現場の都合上、使っているシステムなどがある場合に、そのシステム間の連携にノーコードツールを使って対応するということができたりします。
また、全社プロジェクトではカバーしきれない部分に対して、現場のプロセスに即した一時的なアプリをノーコードで開発することで、即席での対応をするということもできたりします。
こうした対応は、全社最適の視点では具体的な対応策は見えづらいため、現場の人だからこそ、対応できるという強みを活かすことができます。

個別最適でのノーコード開発運用を回すために

ただし、実際に現場の人が個別最適をする上でも、課題はあります。
ここでは、運用を回すうえでの課題への対応策を2点説明します。

1.独自の運用をコントロールするためのガバナンス

ノーコードは手軽さゆえに、統制が取れずに、独自の運用が進んでしまうことは、しばしばあります。
全体最適で進めたDXの方向性と反する結果になってしまいます。
そうした結果を防ぐために、自由になりすぎないように統制を取っていく必要があります。
そこで、どこまで自由に開発ができるかなど、ルール作りや開発規約の作成が求められます。
また、プロセスとして、IT部門やセキュリティ部門などの専門性があり、統制を取れるところが、確認やレビューを行うようにして、コントロールをしていくということも考える必要があります。

2.開発をしてもらうためのトレーニング等のフォロー

実際に現場での個別の推進をしてもらうためには、現場担当へのトレーニングも重要になります。
現場で課題があれば、自分たちで勝手に対応してもらえるのは、理想の姿ではあります。
ただし、実際に開発経験のない人にとっては、たとえ簡単なノーコードだとしても、システムを使った課題解決のイメージができず、何もできないということが往々にしてあります。
なので、ツールの使い方だけでなく、ITやシステム開発の一般的な考え方の教育や他部門事例の共有など、現場が自律してもらえるようなトレーニング設計が重要になります。

まとめ

ノーコード・ローコードツールでは、IT専門知識を持たない従業員でもアプリ開発が可能となりました。
そうしたツールを活用して、現場の人材だからこそ見える課題を解決することで、業務を円滑に進め、全社のDX実現に寄与することができます。
全体最適と個別最適の両立が可能にすることで、全社的なDXと現場レベルでの具体的な改善が同時に進行し、企業全体の競争力を一層強化していくことが可能になります。

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記事を書いた人

大塚 友晴