経営改革を加速する “バズワードのいいところ取り”

経営改革の現場にいると、1年の間にいくつもの「新語」が登場します。自分たちが目にして知る場合も、お客様から「これをやりたい」とか「こういう経営手法があるようだけど」と取り上げていただく場合もあります。

その「新語」とは、よくあるアルファベットの羅列です。AIみたいなものは普遍的なワードですが、私たちも深く関わる、DXやMOPs、他のCXなどのxX系などは常連で、人によってはこれらすべて「バズワード」としてくくって話をされます。

グロービスの用語集によると、「バズワードとは、いかにも専門性・説得力のある言葉に聞こえていても、曖昧な定義のまま広く世間で使われてしまう用語・造語・フレーズのことである。」とのこと。やはりこういった皮肉を伴うようです。

試行錯誤が繰り返される現場にいると、多少疲れようともこういった新語の栄枯盛衰に常に向き合っていかないといけないので、否定するでもなく妄信するでもない、自分たちなりの付き合い方が大事です。

今回は、コンサルティングを生業とする立場から、そのおすすめスタンスを説明し、今後はそれぞれのワードにブレークダウンして当社のメンバーからの解説をしていきたいと思います。

“Buz or not”はナンセンス

先に述べたように、私たちは「試行錯誤の連続」の世界にいます。そんななか、常に新しい考え方や手法は出てきて当然ですし、むしろ必要なことなので、新語を伴ってそれらが表出されることは肯定すべきことだと思います。

ただ一方で、解釈の幅があるがゆえに現場に混乱を招いていることも事実ですし、プロジェクト等をやっていると必ず数名「冷ややかな方」がいて、そんなのバズワードだから、と「やっても無駄」の方向の議論になることもあります。

あまり良くないのが、そこから、“Buzz or not”の論争になるケースです。その中身は、どちらが知見が上かということの構図の場合があったり、取組に対してのポジティブ/ネガティブの構図であったりと様々です。

ただ、いずれにせよ確実にいえるのは、「そんなのバズワードだから」という話は、本質的議論ではない、ということです。

こういう言葉が生まれる背景は、経営改革を仕事にしている人たちが、研究の結果からある新概念をわかりやすく一言にしてくれているだけです。もちろん狙いがあるかないかでいうと、あると思います。名声を得るとか書籍が売れるとかあるでしょう。

コンサルティング会社やソリューションベンダーが発祥のものもあります。本心からのお客様に対する問題提起の側面もあると思いますが、風が吹けば桶屋が儲かる的な、マーケティングの一環のケースもあるでしょう。

このように、“良心と計算が同居している”のがバズワードです。ですので、乗っかることで、自分のメリットはあるものの誰かの便益にもなる、ことになります。

こんなこと世の中にたくさんあると思いませんか? そう考えると、バズワードであるかそうでないか、は、よほど酷い創作ワードでない限りは大して気にすることではないでしょう。「なんかバズワードっぽいね」と面白がりながら、何かを考えるヒントくらいにするのがおすすめです。

自分なりの理解には経営管理の基本が大事

昨今の風潮で、若干気になることは、ERP, CRM, MAなど、横文字ありきで世の中が進むことです。当社自身も「DXとMAがメインです」というので何ら違わないのですが、それらの本質を語れるかどうかというところで差がないといけないと思っています。

とかく今は、ツールから入ることが多い時代です。何でもパッケージ化されて、申し込んでログインすれば経営管理手法や業務改革の手段は簡単に手に入ります。この状況下で仕事を始めた方々は、それが普通です。

ただそれらを生み出した人たちには、対象としている経営課題を具体的にBefore/Afterでどう解決しようかという思想があります。つまり、経営管理や業務改革のことを理解したうえでのツールの機能です。

その一歩踏み込んだレイヤーでの理解はバズワードとの付き合いのなかでもとても重要です。

例えば「DX」についていうと、IDCの定義によると、「企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォームを利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」

とのことですが、外部エコシステムという話では、市場特性や顧客特性というものを分析するにはどういう視点がいるか、内部エコシステムという話では、会社というものはどういう機能で成り立つか、といった基礎知識がないと本当の意味での理解はできません。

あらゆるバズワードで、その定義は“一旦”どうなっているか、その中にある意味を経営管理のフレームワークに当てはめると、つまりそれは何か、までわかって初めて自分の言葉としてつかえるようになるでしょう。ここは手抜きをしてはいけないところだと思います。

固有名詞で語ろう

新語が出てきたときに是非行っていただきたいのは、「この言葉を自社にあてはめると」「この言葉を自部門の業務に当てはめると」という、固有名詞化です。

DXもマーケティング部門と管理部門で全く異なる定義になるでしょうし、創業100年の企業と設立1年のベンチャーとでは全く違うところに重点が置かれます。

最近は一つの企業のなかでも、プロジェクトは部門内で閉じたものは少なくなっています。また外部企業も巻き込んだものも増えています。そこで解釈のばらつきのあるバズワードで「〇〇プロジェクト」としても、方向性が定まらず計画策定フェーズで頓挫してしまうことでしょう。

こういったリスクを排除して、ひとつの仕事を前に進めるためにも、まずは自社の言葉に落とし込むことが大切で、日ごろからそういう習慣があると、いいものが出てきたときにそれを取り入れるスピードも上がることでしょう。

また、自社の言葉に翻訳できないと、DXは大きな会社だけのものだから自社は関係ない、と中小企業が見逃してしまったり、うちは顧客接点に関わらない部署だから関係ない、と改善課題への着手のチャンスが素通りするなどのリスクがあります。

「うちの場合だと、〇〇部門の××業務で、お客さんから言われている△△を、□□を使ってこう変えることなんだな」といったことを、ケースとして具体化してみるところからやってみるとよいでしょう。

一番かしこいのは“いいところ取り”

以上、色々と述べてきましたが、バズワード自体に決して否定的にはならず、使い方を工夫すればよい、ということはご理解いただけたかと思います。

実際、私共がかかわる多くのプロジェクトでも、名称にアルファベットが並んでいいます。多くの人を動かして、ひとつの大仕事をやり遂げようとすると、「方向性や目標をひとつにすること」は大切です。また、それが「分かりやすい」ことも必須要素です。

その状態をつくるための、便利ツールとして簡潔なワードを使うことはいいことだと思います。プロジェクトがうまくいく会社は、こういうワードをある意味割り切りつつ便利に使っている会社です。

次から次へと出てくるワードと付き合い続けないといけないのはビジネスの世界にいる以上は定めといっていいでしょう。決して斜に構えて否定してチャンスを見逃すようなことはせず、「経営管理の理解」と「固有名詞化」とセットでバズワードを使いこなしていいところ取りをすることが一番かしこいやり方ではないでしょうか。

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さて、基本的なスタンス編はここまでにさせていただき、次回以降は、個々のワードをどう理解すればよいか?を現場スタッフから説明をしていきたいと思います。

次回は、当社の本業であるデジタルマーケティングで一番ホットな(バズ)ワード、MOPs(マーケティングオペレーション)について述べたいと思います。

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。次回も楽しみにしてください。

記事を書いた人

横山 彰吾