2023.04.27

新時代に求められる非財務情報の開示要請に対応していくために・・・

はじめに

各業界、産業が抱える課題や置かれている状況は様々です。そういったことから、GXによるカーボンニュートラルに向けた取り組みの緊急性や難易度も異なります。今回は、脱炭素における取り組みが環境課題への影響が大きいとされる7つの産業「製造業(産業財、消費財)」、「小売」、「通信」、「銀行」、「化学」、「エネルギー」に焦点を当てます。各産業のGXの現状を解説しながら、代表的な企業の事例を交え紹介していきます。

業界特性別GXと企業事例

  1. 製造業
  2. 産業財

    全世界のCo2排出量51Gtの約50%は製造業に起因しています。 そういったことから、製造業のカーボンニュートラル経営の実践は急務であり、 環境対応とコスト競争力を両立させるものづくりを目指すことが求められています。 環境負荷を軽減した製品はどうしても価格が高くなってしまうため、 適切な仕様とタイミングで対応製品の市場投入を図り収益化することが求められます。 何を使って(原材料や部分品の調達)どう作るか(製造過程)だけではなく、 自社が作った部品・製品が何に使用されて、それが市場ニーズに合致しているか、 までを環境配慮の視点を交えながら注視していくことが求められます。 環境意識の高い企業において、営業・製造・調達の各側面における排出量の可視化が不十分な製品は市場で受容されないリスクも高まっています。BtoBの製造業は、自社自体が排出削減の強いプレッシャーを受けるだけでなく、サプライチェーンの前後(顧客側・調達側)と深く協調関係を構築するなど、考慮すべき課題が往々にして存在します。製造業がサステナビリティを配慮し、GXを推進することは地球環境問題への解決に大きく助長します。
    【企業事例】
    日産自動車
    日産は、市場のニーズを的確に捉え、環境対応とコスト競争力を両立させる環境負荷を軽減したものづくりを推進している好事例です。2050年までに事業活動を含むクルマのライフサイクル全体におけるカーボンニュートラル実現のため、2030年代早期より、主要市場に投入する新型車をすべて電動車両とすることを目指しています。さらに、エコシステムの開発やエネルギーセクターとの横連携によるサプライチェーン全体での環境対応という点でも非常に積極的です。具体的な取り組みの詳細については以下参照。
    ① よりコスト競争力の高い効率的なEVの開発に向けた全固体電池を含むバッテリー技術の革新
    ② エネルギー効率をさらに向上させた新しいe-POWERの開発
    ③ 再生可能エネルギーを活用した分散型発電に貢献するバッテリーエコシステムの開発、電力網の脱炭素化に貢献する、エネルギーセクターとの連携強化
    ④ ニッサン インテリジェント ファクトリーをはじめとする、車両組み立て時の生産効率を向上させるイノベーションの推進。生産におけるエネルギーと材料の効率向上
    https://www.nissan-global.com/JP/SUSTAINABILITY/ENVIRONMENT/CARBONNEUTRAL/

    消費財

    地球温暖化の深刻化に伴い、各メディアがサステナブルな商品の訴求を行っていることも影響し、消費者の環境意識が高まっています。 カーボンニュートラルが商品選択の決定に重要な要素になってきているということです。こういった流れを受け、欧州を中心に消費財メーカーは取り組みを強化しています。消費財メーカーの活動が環境に与える負の影響は大きく、主要な製品カテゴリーのサプライチェーン別に見ると、世界のCo2排出量のうち、食料が25%、ファッションが5%、日用品が5%を占めています。こういった現状を踏まえ、消費財メーカーに対する脱炭素化の要請は強まることが予測されます。

    参考:WEF_Net_Zero_Challenge_The_Supply_Chain_Opportunity_2021.pdf

    消費財メーカーのCo2排出量は自社以外のサプライチェーンにおけるプロセスで排出される(スコープ3)の割合が極めて高いです。 自社のオペレーション変革だけではCo2削減の効果は限定的であり、上流・下流含めたサプラーチェーン全体で企業を巻き込んでいく必要があります。 食品企業は上流である農業における環境再生(リジェネラティブ農業*)、物流から下流の小売・外食における廃棄ロスの削減までの連携が必要となります。 ファッション企業では、上流における生地の生産、衣類の製造から売れ残り商品の廃棄ロス削減というように、サプライチェーン横断で取引先と連携する必要があります。 環境配慮の目線合わせをしながら、ステークホルダーと一緒にカーボンニュートラルを実践することが重要です。 このように、消費財メーカーはサプライチェーン全体を俯瞰していかなければなりません。 自社のサプライチェーンのCo2排出量を把握し、Co2削減策やその効果、コストを明確にした上で、優先順位を決め全体戦略として落とし込んでいくことが求められます。 原材料の環境対応や、代替素材の活用、パッケージの変更、製品ロス削減など様々なことを考慮した上で、対策を講じる必要があるでしょう。 *リジェネラティブ農業:「環境再生型農業」とも呼ばれる。農地の土壌をただ健康的に保つのではなく、 土壌を修復・改善しながら自然環境の回復に繋げることを目指す農業を指す。
    【企業事例】
    ユニ・チャーム
    日常生活に欠かせない衛生商品を提供するユニ・チャームは消費財メーカーの中でも積極的な環境マネジメントを全社的に推進しています。NGOとの意見交換を通じてマテリアリティを特定し、2030年をゴールとする「環境目標2030」と中長期ESG目標「Kyo-sei Life Vision 2030」を策定するなど、社内制度においても徹底しています。さらに、ライフサイクル全体を俯瞰した、資材調達から製造、輸送、使用後の廃棄に至るサプライチェーンの各事業活動を通じて、環境改善を推進しています。そういった点含め、ユニ・チャームの環境への取り組みは、消費財メーカーとしての好事例と言えるでしょう。
    https://www.unicharm.co.jp/content/dam/sites/www_unicharm_co_jp/pdf/csr-eco/report/ucsus2022_08-01.pdf#page=2

  3. 小売
  4. 小売産業は生活者に近いが故に、環境配慮の取り組みが遅れれば1つの批判要素となるでしょう。 世界のエネルギーの11%は小売業で使用されていること、プラスチック製品の40%はパッケージとして使用されていること、 また小売と外食によるフードロスも米国だけで2400万トン発生していることなど、小売が環境に及ぼす影響は極めて高いという現状があります。 生活者に密接した小売は、直接的な反応を受けやすいです。加えて、取引がある数多くのサプライヤー間で、環境意識の温度差も激しいです。 だからこそ、危機感を持ってカーボンニュートラルを促進していかなければなりません。 小売では「施設(店舗・倉庫)」、「物流」、「サプライヤー、消費者」の3つの観点から脱炭素化を見直す必要があります。 まず、「施設(店舗・倉庫)」では、店舗における電気利用(照明・空調など)がCo2排出量の大半を占めているため、 冷蔵・冷凍におけるフロンの代替、LED導入や再生可能エネルギーの導入などの対応策が考えられます。 「物流」では、EV(電気自動車)やFCV(燃料電池自動車)などの導入、配送の効率化などの対応策が考えられるでしょう。 「サプライヤー、消費者」では、プラスチックパッケージの削減や、カーボインフットプリント*のラベリングを行うなどして生活者への見える化を実施することなどが考えられます。 今後、環境問題が注目視される中で消費者に近い存在の小売だからこそカーボンニュートラルに積極的な姿勢を示す必要があります。 *カーボインフットプリント:直訳すると「炭素の足跡」。 商品やサービスの原材料の調達から生産、流通を経て最後に廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCo2に換算したもの
    【企業事例】
    H&M
    H&M では自社の負の影響を減らすことを目標に掲げ、製造から輸送、さらに包装まで、全ての面において環境負荷軽減の取り組みを実施しています。 具体的な取り組みとして、有害な化学物質、化石由来のエネルギー源、使い捨てパッケージを避けるなどを実施しています。 さらに、当社は2030年までに排出量を半分にし、2040年までに環境への影響を実質ゼロにすることを達成するという目標を掲げています。 また、新たな取り組みとして世界自然保護基金(WWF) やSolidaridad などの組織と共に、ファッション業界全体に新しい水の基準を定めることを試みています。 スタッフとサプライヤーをトレーニングし、水の使用量を最小限に抑え、農家が使用する化学物質を減らすように指導します。 また、トルコやバングラデシュなどの国々の河川や淡水の回復と保護のため、より強力なポリシーを推進しています。 そういった積極的姿勢は、H &Mのブランディング価値向上に助長しています。今後、ファッション業界全体へのサステナブルな取り組みの推進をさらに後押しするでしょう。
    https://www2.hm.com/ja_jp/sustainability-at-hm/our-work/clean-up.html

  5. 通信
  6. 今やデジタル化した世界でインターネットが主流となっており、通信が果たす社会への貢献と使命は大きいです。 他業界への影響力・波及効果が高い通信キャリアが先陣を切ってカーボンニュートラルを推進する必要があります。 国内の通信事業全体の消費電力は100億k Wh、ICTまで含めると全体の数%に及び、特に通信地局・地域拠点・データセンター・通信端末などは、 運用するのに大量の電力を必要とします。今後、さらにデジタル技術の普及による通信量拡大に伴う電力消費は無視できないでしょう。 2030年のエネルギー消費需要は現状の4倍に膨れ上がると推測されています。

    参考:経団連 経団連 低炭素社会実行計画 2019 年度フォローアップ結果 個別業種編 通信事業者は電力消費に伴うCo2排出量が多く、その削減のためには全社で包括的な施策を立案し、実行することが求められます。 電力調達では再生可能エネルギーへの切り替え、施設管理では事務所の消費電力を削減する、研究開発では消費電力を効率化できる技術開発への投資を積極的に推し進める、 などといった対策を講じることで脱炭素化のサイクルを回していけるでしょう。また、自社で提供している商品(通信設備・スマートフォン、タブレットなどの電子機器)を回収し、 次世代製品の製造に再利用するなどの手打ちは、カーボンニュートラルに関心のある企業は積極的に実施しています。 通信事業者の強みとして、プラットフォームを活用し、脱炭素ソリューションを展開することも有効的です。 「見える化」や「排出量削減」といったシステムソリューションはGX戦略が進む中で、通信業界が優位性を測れる領域となるでしょう。 環境問題というリスクを機会に転じ、環境対応に優れたサービスを提供することで企業価値向上にも繋がります。
    【企業事例】
    Apple
    事業全体、製造サプライチェーン、製品ライフサイクルのすべてを通じて、2030年までに気候への影響をネットゼロにすることを目指しています。 実績としては、風力発電をはじめとした再生可能エネルギーを活用して2018年の時点でカーボンニュートラルを達成しています。2019年に発売されたApple製品の多くは100%リサイクルされた再生材料を使っており、スマートフォンにはじめて導入した企業となりました。さらに、スマートフォンの端末に使われているアルミニウムには炭素を使用しないなど、Apple独自の精錬プロセスをほかの企業に開発支援をしています。


    以下、AppleのCEO(最高経営責任者)、ティム·クックの叙述引用

    「企業はこれまで以上に持続可能な未来、すなわち、私たちが共有している地球という星に対して、 私たちが抱いている共通の思いから生まれる未来を築くための貢献をする重大な局面にいます。Appleの環境に対する取り組みを支えているイノベーションは、 地球環境にとって良いだけでなく、当社製品のエネルギー効率をさらに高め、クリーンエネルギーの新たな資源を世界中で稼働させることにも役立っています。 気候変動に対するアクションは、新時代のイノベーションの可能性、雇用創出、持続的な経済成長の礎になり得るのです。 カーボンニュートラルに対する当社の取り組みが波及効果をもたらし、さらに大きな変化を生み出すことを期待しています」 https://www.apple.com/jp/newsroom/2020/07/apple-commits-to-be-100-percent-carbon-neutral-for-its-supply-chain-and-products-by-2030/ https://www.apple.com/jp/supplier-responsibility/

  7. 銀行
  8. 銀行は企業に必要不可欠な資金調達を担う重要な役割を果たしています。故に、全産業のカーボンニュートラル移行に伴い、 銀行としての対応も早急にしていかなければなりません。銀行に対しての各種原則・規則も導入されています。 2006年に国連より発効された「責任投資原則(PRI)」、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」による報告書、SDGsやパリ協定などの 社会的目標と事業運営の整合を求める「責任銀行原則(PRB)」などが代表として挙げられます。信用リスクを損なわないために、 そういった原則に対応していかなければなりません。サステナブルファイナンス、グリーンローンなど、脱炭素関連の金融市場は拡大しており、 2013年から2019年にかけて、サステナブル関連債権は年平均成長率が約70%、サステナブル関連融資は約40%と大きく成長しています。 参考に、金融庁が公表している日本におけるESG関連投資信託の新規設定本数の推移は以下です。 世界的な投資規模として、2025年までに、53兆ドル(全投 資金額の約3分の1)を超える見込みであり、国内においても、ESG関連投資信託の新規設定本数は増加傾向です。

    引用:金融庁 サステナブルファイナンス市場の整備等 さらに、官による後押しも活発化しています。「2020年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」で日本政府が民間資金として2兆円の公的資金の準備を公表しているのです。 そういった潮流の中、銀行が脱炭素関連の投融資における商品やサービスの提供力を高めることによりビジネス機会を得ることができます。 例えば、コーポレートバンキングでは、脱炭素に向けた必要資金を提供するグリーンボンド/ローン、サステナビリティリンクボンド/ローンに留まらず、 ストラクチャープロダクト、デリバティブなども今後発展が期待されています。リスク評価・管理の高度化、 プライシング能力の向上により商品の競争力と開発力を高めるとともに、環境意識が高い銀行として企業価値を向上することで、 顧客・投資家・従業員などのステークホルダーを惹きつけることができるでしょう。
    【企業事例】
    2050年までに投融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量のネットゼロ、および2030年までに当社自らの温室効果ガス排出量のネットゼロの達成を掲げています。ファイナンスを通じた脱炭素化実現へのコミットメントとして、2050年までに投融資ポートフォリオのGHG排出量ネットゼロ実現を目指すことや、気候変動リスクの与信プロセスの反映を通じたエンゲージメント機能の発揮、さらに脱炭素に向けたイノベーション技術やトランジションの取り組みを積極的に支援しています。MUFG自身の環境負荷軽減や、自社の利益の一定割合を社会貢献へ当てるなど、独自の取り組みも積極的に行なっています。1,000億規模の再エネファンドの立ち上げや、カーボンオフセット*なども実施しており、様々な対応策を講じている点で、金融業界を代表するGXの好事例と言えるでしょう。 *カーボンオフセット:日常生活や経済活動において避けることができないCO2等の温室効果ガスの排出について、できるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、どうしても排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせること。
    https://www.mufg.jp/csr/environment/cnd/index.html
    https://www.mufg.jp/dam/csr/environment/cnd/cnd.pdf

  9. 化学
  10. 化学産業は、製造業の中でもCo2排出量の割合が大きく、カーボンニュートラル社会への移行は急務です。 オックスフォード・エコノミクスの試算によると科学産業は2℃シナリオの実現のために2050年までにCo2排出量を約9割削減することが求められています。 (参考:https://iea.blob.core.windows.net/assets/a86b480e-2b03-4e25-bae1-da1395e0b620/EnergyTechnologyPerspectives2023.pdf) 化学産業におけるカーボンニュートラル対応において、サーキュラーエコノミー*(資源循環型経済)への取り組みも求められています。 循環型社会を実現することで、これまでの一方通行でモノを使う「直線経済」からの脱却を可能にします。 カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーという2つの取り組みは、化学品企業のサステナビリティ経営にとって大きな機会となりうるでしょう。 カーボンニュートラル社会への移行が活発化する中で、すでに多くの日本化学品企業がCo2排出が大きい事業の売却や事業撤退に動き出しています。 日本化学工業協会(東京・中央)は2022年4月、化学産業が脱炭素を進めるのに最低7.4兆円の投資が必要との試算を発表しました。 試算を基に政府へ事業の転換支援を要請する方針を示しています。 (参考:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2647M0W2A420C2000000/) そういった中で、事業のポートフォーリオを入れ替え、事業所をどのように再編していくのか、また、今後必要となる環境投資の事業・事業所への配分していくのか、 を慎重に検討していくことが必要です。気候変動や地球温暖化の深刻化による時代の変化により、顧客の業界構造や素材に対する要求も変容していくことが想定されます。 化学品企業は、従来のモノ売りではなく、自社のソリューション技術を活かした価値提供、 さらに顧客との相対のパートナーシップや、複数のエコシステムを構築する事業開発力こそが、競争優位性を発揮できる要素となるでしょう。 *サーキュラーエコノミー:製品、素材、資源の価値を可能な限り長く保全・維持し、廃棄物の発生を最小限化する経済システム。
    【企業事例】
    三菱ケミカル
    当社は、循環型社会の構築に貢献することを目標とし、2050年温室効果ガス排出量実質ゼロ宣言、中間目標では2030年には海外含むグループ全体の排出量を29%削減(19年度比)を掲げています。 30年目標の寄与度は7割が外部要因、3割が内部要因としています。外部要因については電源構成の改善によるもので、 30年度に国内電力のCO2排出係数が引き下がることを前提としています。内部要因については、製造プロセスの原単位改善や自家発電用燃料の転換といった自助努力をあげており、 30年までに1000億円の設備投資を準備することを表明しています。長期的な目線としては、2050年カーボンニュートラル達成に向け、購入電力のCO2フリー化、バイオマスナフサ、 CO2の資源化、水素・アンモニアSC実装など新技術の確率を進めるとしています。自社の有する革新的な技術を用いて、環境・社会の課題に貢献し、 人・社会そして地球の持続可能な発展に貢献する「KAITEKI実現」をめざしています。
    https://www.m-chemical.co.jp/csr/index.html

  11. エネルギー
  12. 多くの企業は、外部環境の変化によってカーボンニュートラルへの対応を迫られていますが、エネルギー業界にとっては、環境変化への適応という次元ではなく、 業界構造自体の変革が求められます。よって、多業界で検討する枠組みより一段深いレベルで考えていく必要があります。 そもそものエネルギー利用のあり方から変革する必要があり、そのためには多様な業界とのコラボレーションなど、 新たなビジネスモデルの構築といったことに視野を広げていかなければなりません。 環境省よれば、温室効果ガスの排出量は年々減少はしているものの、2020年度の総排出量11億5,000万トン(Co2換算)のうち、9割が二酸化炭素(CO2)が占めています。 そのうちエネルギー起源の排出量は約8割となっており、エネルギー起源であるCO2排出量の削減が喫緊の課題となっています。 エネルギーの脱炭素化なくして日本の脱炭素化はあり得ないということです。

    引用:環境省 2020年温室効果ガス排出量(確報値)概要

    現時点で、化石燃料への依存割合を低めたり、アンモニアの混焼、水素発電の導入、CCSによって低炭素化したLNGの活用なども含めて、 電力会社は既に脱炭素化に向けて業界全体で様々な打ち手をしています。 エネルギー業界が脱炭素への取り組みを積極的に行うことは、エネルギーを活用する企業・個人への大きなインパクトを提供できます。 エネルギー事業会社を起点として、電力を提供する各方面へネットゼロを推進することは、社会全体へ大きな影響をもたらすことになります。 そういった意味で、エネルギー業界のカーボンニュートラルへの積極的対応は期待と責任が大きいといえるでしょう。
    【企業事例】
    東京電力
    電気事業低炭素社会協議会の一員として自主目標の達成に向け、再生可能エネルギーの拡大等、電力の低・脱炭素化を促進しています。 さらに、情報開示についても積極的に行い、組織内・外のGHG排出量を公開しています。 TEPCOグループ全体として、顧客へ販売する電力由来のCO2排出量を2030年度に2013年度比で50%削減する目標を掲げています。 脱炭素に向けた「電化」への期待を事業機会として捉え、環境先進企業に対して、 太陽光発電等設備の所有による自家消費とTEPCOグループが発電する再生可能エネルギー電気の最適な組み合わせの提案を実施することで、 電動車両利用拡大やそのインフラの整備などを行なっています。自社が起点となって、 電力を供給する各方面へ働きかけを行なっているエネルギー業界の好事例と言えるでしょう。
    https://www.tepco.co.jp/about/esg/environment/carbon-neutrality/index-j.html

まとめ

カーボンニュートラルと一言にいっても、業界の特性別でGXへの取り組み方は様々です。 今や、環境問題の深刻化による脱炭素化への対応の必要性が急速に高まっている中、限られた産業のみが環境対応をおこなっていても意味がありません。 他産業への波及効果を考慮し、カーボンニュートラルに対応していく必要があります。 各産業が持つ優位性を活かし、環境変化に対応できるように準備をすることで、リスクの予防・回避、さらに新規ビジネスへと繋げることができます。 未来世界を見据えた上で、各業界が取り組むべきことを明確にし、自社にできることから対応策を講じていくことで社会的意義を高めていくことが重要です。 持続的な企業成長と脱炭素化を目指すGXへの取り組みは、今後、日本企業でも加速していくでしょう。