MAツールを利用する際に大切なこと
以前は、マーケティングオートメーション(以後、MA)といえば主にマーケティング効率化のためのツールという位置付けでしたが、このコロナ禍で遠隔での顧客との関係維持のためのツールという位置付けに変わってきています。MAは、見込み客の獲得から受注後フォローまで、プロセス全体を一貫して管理でき、非対面コミュニケーションの最適化・自動化・効率化に役立つ素晴らしいツールですが、ただ導入するだけで結果が出せるというわけではありません。
今回は、MAを利用する際に知っておくべきポイントをお伝えいたします。
まずはマーケティング戦略・マーケティング施策の設計から
MAはあくまでツールでありマーケティングをサポートする手段ですから、MAの前段階でマーケティング戦略やマーケティング施策の設計をしておく必要があります。まずは今年度や四半期の経営戦略・事業戦略を把握し、それをもとにKPIやターゲットなどの全体像を固め、どのようなセグメントにマーケティング施策を打つべきか優先順位をつけていくか等を検討します。マーケティング部だけでなく経営層や営業部門などの他部門と密に連携して戦略を立てることが大切です。
戦略を立てたら、次にマーケティング施策の設計です。施策設計フェーズでは、様々な属性や検討フェーズのターゲットにリーチするための手法を考えます。メールやウェビナーだけでなく、展示会、ワークショップ、テレアポなどオンラインからオフラインまで幅広く考えましょう。MAはあくまでその一部で利用するツールなのです。
MAの主な役割を知る
MAには主に、リードジェネレーション、リードナーチャリング、リードクオリフィケーション、アナリティクス・レポーティングという4つの役割があります。
それぞれ確認していきましょう。
1.リードジェネレーション
1つ目の役割は、「リードジェネレーション」、すなわち見込み客の獲得です。BtoBでいうと名刺の獲得、BtoCでいうとお得意様名簿の獲得にあたります。MA導入直後に着手しやすいのは、自社Webサイトの問い合わせフォームや資料ダウンロードフォームをMAで作成したものに差し替える、フォームの移行です。MAで作成すると、Thanksメールや社内アラートメールの送信、CRMへの連携、数日後のフォローメール送信等を自動実行することが可能になります。
2.リードナーチャリング
2つ目の役割は、リードナーチャリングです。「見込み客を育成すること」をリードナーチャリングと言います。リードの量を絞り過ぎないようにしつつ質を上げていくためにはリードナーチャリングが必要です。まだ顕在化していない見込み顧客を育成し、成長させて顕在化を進め、コンバージョンポイントに到達する優良顧客に育てます。ナーチャリングするために必要なのは、「コンテンツ」と「シナリオ設計」です。顧客の段階に合ったコンテンツをそれぞれ用意する必要があり、CV向上のためにコンテンツ設計も必要になってきます。コンテンツが用意できたら、どのような状態の顧客に、いつ・どのタイミングで、どんなコミュニケーションをとるのか、どのコンテンツを提供するのか等シナリオを設計しましょう。
3.リードクオリフィケーション
3つ目の役割はリードクオリフィケーションです。「購入可能性の高い見込み顧客を選別する活動」をリードクオリフィケーションといいます。また、購入可能性の高い見込み顧客を選別するために属性や行動に点数をつけることをリードスコアリングと言います。
具体的には、リードジェネレーションによる見込み客の獲得情報やリードナーチャリングの行動履歴に応じて、スコアの加減算を行ない、コンバージョンの可能性を見える化することです。以下は、スコアリング設定の一例です。属性情報では、企業規模が大きい場合は取引額の高さが期待でき、役員クラスなら本人の意思決定が大きく影響するため高スコアを付与します。行動では、料金などのWebページを閲覧した場合も高スコアを付与します。スコアは加算されるだけではなく、減算することも必要です。一定期間Web閲覧歴がなかったり、メール開封がされない場合等には、スコアの減算も検討しましょう。一般的に、100点を超えた見込み客は「コンバージョンの可能性が高い」と判断して営業へ引き渡します。
また、MAでは、リードクオリフィケーションを行なうために、スコアリング、アラートメールなどの機能を活用します。アクションがあったらスコアを追加するように設定したり、一定の点数に達したら営業部門へメールを送信されるように設定したりします。
最初から上手にスコアリング設計ができるか、というとそうではありません。メールの開封とWebページ閲覧は同じ点数で良いのか、点数差はどれくらいが良いのか等細かい部分で色々と悩んでしまうはずです。重みづけしようとすると設計に時間がかかってしまいますので、導入段階ではすべてのアクションを1点として設定するのがお勧めです。数か月~半年ほど運用してみると、スコアの傾向などが見えてくるので、そのタイミングでスコアの見直しを行ないます。何度かスコアの見直しを行なう中で、設定修正を重ねていき、最終的にはアクションによって重みづけをしていきましょう。
4.アナリティクス・レポーティング
4つ目の役割は、アナリスティック・レポーティングです。特に注目すべきは、「PDCA活動に必要な指標の分析」と「マーケティング指標の分析」です。まずは、PDCA活動に必要な施策の分析、その後マーケティング全体の分析といった流れで確認します。
「PDCAに必要な指標の分析」とは、たとえば、リードジェネレーションではチャネル分析、リードナーチャリングではシナリオ分析、そしてコンバージョンに至る行動履歴の把握などのことです。これら一連の情報がPDCAを回すうえで必要な情報です。MAの各種レポート機能を使用してKPI数値を日々確認し、パフォーマンスが低下したらすぐに原因を突き止め、次の施策へ活かしていきましょう。
「マーケティング指標の分析」とは、KGIなどの分析のことです。KGIとは最終的に達成する目標で、「月間の商談数10件」「売上1,000万円」のような設定をします。ただし、KGIの分析を行うためには、基本的にCRMとの連携が必要で、MA導入時点でここまで実施できる企業は多くないのが実情です。
MAで実現可能なことを把握する
MAの役割を踏まえ、事前に立てたマーケティング施策においてMAで実施できることは何かを確認しましょう。MA導入によって可能になることは多くありますが、すべてを自動化できる魔法のツールではありません。MA活用により期待できるのは、設定等の手作業を減らせることや、ページを閲覧した人へガイドコンテンツをメールで送る、資料DLをした人へトライアルキャンペーンのメール案内を送るなど購買行動に合ったOne to Oneのコミュニケーションが可能になることなどです。
最後に
MA導入となるとMAに意識が行きがちですが、MAだけでなく戦略や営業プロセス等にも目を向けることが大切です。また、MAを使用し始めてしばらくは効果が出るまで試行錯誤を繰り返すことになります。成功の鍵は、良い戦略・施策・シナリオを描けるかどうかです。他部門も巻き込み、丁寧に全体の設計をしていきましょう。また、MAには多くの機能がありますが、導入時にあれもこれもと考えてしまうとなかなかMAを使った施策を始められなくなってしまいます。MA導入時は「スモールスタート・スモールサクセス」を心掛け、少しずつ着実にすすめていきましょう。