これからの広告運用 デジタルマーケティングのメリットにこそ注意する

広告運用担当者として考える 今後のデジタルマーケティングとの付き合い方

最近ではデジタルマーケティングの名前も随分浸透し、マーケティングにデジタルが紐づく状況はごく自然となってきました。施策内容を数値化するのはもはや当然として、今ではAIや機械学習などの精度をどこまで高められるかに関心が推移していると実感します。

デジタルマーケティングの1つとされるWEB広告も同様で、Google広告、FacebookをはじめとしたSNS広告でも、機械学習の進化には目を見張るものがあります。各広告媒体では頻繁にアップデートの通知・予告がされる状況で、広告運用に携わる立場としても進化のスピードを肌で感じています。

そのようななかで、広告運用者は今後のデジタルマーケティングとどのように付き合っていけば良いのでしょうか。検討にあたってデジタルマーケティングの特徴として、よく言われるメリットをまず2つ確認します。

  1. 数値がすぐ見えることによるPDCAの高速化
  2. 機械学習における精度向上・担当者の工数削減

今後の付き合い方を考える上で上記メリットの性質を押さえることが重要と考え、注意すべき箇所はどこになるかなど、実務を踏まえて改めて考えてみたいと思います。

 

ポイント① 数値がすぐ確認できるからこそ注意 数字に引っ張られない意識を持つ

まず1つ目の数値が見えることによるPDCAの高速化を考えると、WEB広告は代表的な施策例とも言えます。私自身も広告運用の支援をさせていただくなかで、広告の開始以後、定期的にレポートを作成しては週次でチューニングをしてきました。毎週数値を踏まえて施策を打つので、一定の説得力も持ち合わせつつ、確かに改善のスピード感も出ます。

ただ個人の反省も含めてですが、数値がすぐ出ることによって発想が数値ベースとなり、広告内の数値改善に視野が向いてしまうことがありました。なまじWEB広告は各指標がロジックになっていることもあり、もともとアプローチが大から小へ向かうものであるため、視野は一層狭くなりがちでした。(例:CVを増やすには要素を分解し、課題が一番大きそうなCVRの改善に注力するように、大から小へかけて当たりをつけていく)

狭い視点になって広告運用にこだわることで、CV獲得の機会を失ったことも実際にあります。例えばとあるBtoBメーカーのGoogle広告をご支援させていただいた際、基本路線はロジックに沿って広告のチューニングを行っていました。

 

数値だけに注意が向いて、目的の本質を見失わないように

しかし広告でなかなか成果がでないときに、試しに業界メディアに広告を掲載したらCVRはそちらの方が高くなったということもありました。途中で掲載はしたものの機会損失は生まれたわけで、Google広告の数値内で何とかしようという発想から、視野を狭めてしまっていたのです。

反省としては、数値が見られることによってロジック化してしまい、選択肢を絞ってしまった点です。今回も発想をGoogle広告の数値ベースでなく、目的であるリードを増やすにはどうすればと考えれば、業界メディアへの広告掲載も早い段階で実施できたと考えています。

ポイントはデジタルマーケティングの利点である数値に引っ張られすぎず、目的視点を意識することだと思います。とは言っても支援会社ならそもそもGoogle広告がサポート内容、事業会社の担当者なら同広告が業務というように、他手段への切り替えが難しいこともあると思います。こうした時にこそ、弊社のようなマーケティングを横断して支援する企業が頭を使わなければならないと自戒の意味もあります。

 

ポイント② 機械学習で工数が増える? 機械の意図を読み取る必要も

続いてさらに踏み込み、デジタルマーケティングの特徴である機械学習について考えてみます。代表的なWEB広告であるGoogle広告を見てみると、自動入札、動的検索広告、レスポンシブ広告など機械学習はさまざまな点で利用されています。

※Googleの公式によると、2022年6月30日にレスポンシブ検索広告が作成・編集できる唯一の検索広告タイプになるとアナウンスがあり、機械学習の導入は勢いを増すばかりです。

こうした機能がなかった過去と比べると、自動化によって確かに自分の工数削減・広告の精度向上がもたらされたと感じています。特にレスポンシブ広告は自動で最適な広告パターンを配信してくれるので、今までのように拡張テキスト広告で1つ1つ広告パターンを入れてA/Bテストと、手動で対応していた頃と比べるとその違いは雲泥の差です。

 

機械学習を活用するポイントは、”仮説の後付け”

しかし機械学習に任せていくことで、今までの広告改善と決定的に異なる違いに気付きました。それは仮説を後付けで行う必要があるということです。手動での広告設定が主流であるときは、自分で仮説をもって広告を配信し、結果を見てはチューニングを繰り返していました。ただ、機械学習に任せることで、出てきた施策内容の理由を自分で仮説付けしなければなりません。(広告運用担当者としても、ステークホルダーに成果を報告する際、なぜその広告の成果が良いのか仮説を伝えることも考えると)

レスポンシブ広告で最適化された広告文の組み合わせを見て、ユーザーになぜ響いたのかあとから考える必要があるのです。見方によっては機械がなぜこのような配信パターンを出したか考えるというわけです。

※例えば過去にBtoCのお客様で化粧品の広告支援をしていた際、広告は拡張テキスト広告を中心に使い、仮説をもって広告文を追加していました。仮に化粧水を訴求する際に、素材の良さを訴求する広告文の反応が良かった場合、同内容を横展開・深掘りするといった具合です。

 

機械学習の過程を推測するスキルが求められる

これは奇妙な話でユーザーに加え、機械の心情も読み取ると言うべきか、機械学習によって単なる工数削減が生じるのでなく、別途考えなければならない点も生じるのではと個人的には考えています。広告における機械学習においては最適化パターンを探すというように、思想は最大公約数を求めるところにあります。その意味で確かにA/Bテストなどの手間は省け、最適なパターンを素早く確認することができます。ただそれはプロセスのブラックボックス化と同義でもあり、自身で省略化された過程を読み解く必要があります。

表面上は省略された過程について、機械が出した結果、事実より読み取るスキルこそ、機械学習と付き合う上で大事なポイントになるのではと思います。

 

デジタルマーケティングのメリットに潜む注意点を意識することが重要

広告運用担当者が今後のデジタルマーケティングに取り組む上で、数値の見える化によって視野が引っ張られること・機械の意図を読み取る必要が生じ、下記2点がポイントになります。

  1. 数値の見える化によって、本来見るべきものを見失わないようにすること
  2. 機械が出した結果について「なぜ?」と考える過程が重要に

広告で実務に関わると、通常業務でレポート作成・チューニングがあることに加え、広告の運用ポリシー設定、計測設定など取り組む内容も多岐に広がり忙しさを実感しています。ただそのような状況でも、さらにデジタルマーケティングの特性を踏まえた施策を提案することが、弊社としての命題でもあります。BAのコンサルタントとしてもこの点はしっかり意識していきたいと思います。

記事を書いた人

福地 紳