Adobe Summit2019レポート その2

3月26日 世界中から多くの方が米国ラスベガスに集まり、Adobe Summit 2019のメインが始まりました。

初日は、こういうイベントでは恒例の「キーノート」からスタートです。

1万6千人の来場と聞いていましたが、やはり会場はとてつもなく大きかったです。

スクリーンも限りなく横長で、パノラマを3つ繋げたような印象でした。

まずはCEOのShantanu Narayen氏の「Changing the world through digital experiences」と題するスピーチ。Business Transformationもキーワードです。(このあたりを組み合わせると、日本でも盛り上がっているDX:デジタルトランスフォーメーションにもなります。)

Narayen氏の講演は、サブスクリプションモデルで成長を遂げて、自ら変革を繰り返してきているだけに説得力があります。

言っていることはシンプルで、ユーザーのプロセスに沿って、最適かつ一貫性のある体験を提供することが大事だ、という内容。特にサブスクリプションの時代となると、購入してから使っている間の体験は重要。

それを実現するために、リアルタイムの顧客プロファイルを、データを駆使して作っていくということでした。

全体を通じて、「カスタマージャーニー」、「エクスペリエンス」がキーワードですね。プロセス的な思考を超越して「体験」という切り口で全て括るところは、やはり新鮮さを感じます。ビジネスの世界では曖昧にとらえられがちな言葉を、こうも中心に置くのかというのには信念のようなものも感じます。

 

CEOの講演の後、各分野のエグゼクティブと、事例となる顧客の登壇などが繰り返され、来場者の「教育」をしっかり行っていく形でした。

なかでも最も華々しく登壇したのは、もちろんあの人、元Marketo CEOのSteve Lucas氏です。

「Awesome!!」という叫びとともに、いつものエネルギッシュなプレゼンテーションをしてくれました。もう、スターですね。

Lucas氏から最もよく出た言葉は「B2B」だったと思います。Marketo単体のときは、業種・規模問わずカバーするという位置づけでしたが、Adobeファミリーになると、相対的にもう「B2Bのソリューション」です。

とにかく過剰なほどB2Bが強調されていました(Lucas氏も「これまでのキャリアをB2Bに捧げてきた」とまで言うくらいに)。この相対的に優れた部分が、従来のAdobe Marketing Cloudに加わることで、強力な補完となります。

そしてMarketoがAdobeのいう“体験軸”で再定義されると、ABMはABX(Account Based Experience)になり、B2BはB2E(End-to-end digital experience)になります。非常にメッセージの文脈に沿った合理的なコンセプトの変更に見えました。

 

なお、今回はAdobeの大きなソリューション体系としての「Adobe Experience Platform」が公式にリリースされました。そしてMarketoは、そのプラットフォーム上のAdobe Marketing CloudのなかにMarketo Engageという名称で位置づきます。ですので、AIもAdobe-senseiを用いるなど、プラットフォームを活用したさらなる進化が期待できそうです。

あとは注目すべき点として、MarketoとMicrosoft(Linkedin含め)のパートナーシップの発表もありました。これは戦略的なことなので、ややデリケートな話ですが、IT業界の先行きに関わるので気になるところではあります。

 

後半はキーノート内のセッションとして、いくつか事例が紹介され、いずれも「これが体験を提供するということか!」とイメージが湧くもので、来場者からもところどころ思わず歓声が上がるなど刺激になるものばかりでした。

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こうして華々しい1日目は終了しました。

率直な感想としては、日本で各社迷いを感じながら議論をしている「顧客体験」というものが、すでに体系的に整理もされ、こんなに具体化もされているのか、という印象です。

やはり数年の遅れは感じます。今、実態がつかめないまま議論を重ねている日本の企業にとっては、とてもプラスになるソリューションが提供されるのではないでしょうか。

 

※ちょうどイベント中にリリースがありました。

アドビ、Adobe Summit 2019で顧客体験管理(CXM)を提唱

記事を書いた人

横山 彰吾