ワークスタイルシフト:今こそ求められる「適応力」

一向に収束の気配を見せない、新型コロナウィルス感染拡大。

この状況下で、私たちビジネスの現場も、在宅勤務などの働き方の見直しを余儀なくされています。

私もミーティングのほとんどがWebを介してのものとなり、すっかりお客さん共々慣れてきた感があります。

 

しかし先日こんなことがありました。

久しぶりに、軽いワークショップ形式でマーケティング施策を検討する仕事をする機会がありました。

比較的強みとしている仕事なので、いつもと同じような検討の枠組みを用意して視点を提示するスタイルで臨んだのですが、、やはりどうにもやりにくい。

それもそのはず、こういうシーンで我々が強みにしているのは、皆さんの意見を拾って、ホワイトボードが真っ黒になるほど書き出す「躍動感」のあるスタイル。これが完全に封じられてしまったからです。

「うちの差別化の源泉を封じられた。ピンチだ。」これが私のそのときの感想です。

何とか事なきを得ましたが、感触としては、通常の3分の1ほどの成果しか出せていない感じでした。結果、その後持ち帰りの検討が増えることになりました。

 

これは今の状況下で起こることの一部ですが、我々が今直面しているのは、「こういう状況が普通になるかもしれない」という前提で、「適応」をしていくことだと思います。

いわばこれはワークスタイルのパラダイムシフトだと割り切るしかなく、昔のPCの登場やインターネットの登場と同じように、きちんと適応しないと「取り残される」と考えるべきです。

対面がなくなる。あったとしても距離をとる。大勢が集まることはほぼない。移動が極端に減る。といった環境変化に対し、既に明らかになってきていることがあります。人によってはこれを「New Normal」ともいわれます。おそらくこうなるだろう、という気づきをいくつか挙げておきたいと思います。

 

ミーティングやワークショップはどうなる?

みんなでブレストをしてまとめていくようなアクティブなものはできないので、相当考え方を変えないといけません。付箋と模造紙、のようなスタイルはあきらめて、いかに「ストーリー」や「シーン」を練っておくか、なので、準備9割当日1割くらいのパワーのかけ方を想定すべきでしょう。

プレゼンテーションはどうなる?

まず、ディスプレイとプレゼンターとオーディエンス、という組み合わせの最適化がもうできません。ジェスチャーをしても見えないですから、資料とトークが主役です。ますます「分かりやすい」資料と、あとは話し方の「間」。これを磨いた人がこれからの”いいプレゼン”をする人になるでしょう。

仕事のパフォーマンスの見方はどうなる?

これまでは、PCに向かって忙しそうにしていれば、仕事をしているなと思ってもらえましたが、今はそうはいきません。「働いている姿+口頭でのやりとり+成果物」から、ずばり「成果物」になります。必要とされるものが何か、というのを理解する能力と、アウトプットする能力へのウェイトがぐっと高まります。

業績評価はどうなる?

ますます成果主義になっていくのは避けられないでしょう。在宅は自由な分、仕事ができる人には追い風、そうでもない人には逆風、というのが当然出てきてしまいます。できる人はますます忙しく、チャンスも増えていき、「差がつく」と考えるべきでしょう。

能力開発はどうなる?

いわゆる「調整力」や、人が行ったことを自分の成果にするスキル(?)も、過去のものになるかもしれません。まずは、やるべきことをきちっとやる「自己目標管理」力。もし成果主義に向かっていくとしたら、プロセス指標に相当するものは、自己管理がきちんとできていたか、がベースになるでしょう。

モチベーション向上やカルチャー浸透はどうなる?

従来のコミュニケーションを密に行うことによるモチベーション向上が半ば封じられます。皆で頑張ったとしても、飲み会もできないですから。。離れていても、何か方針に関わるものが目に入るよう、各自のクライアント環境に工夫をするなどの必要が出てきます。

福利厚生はどうなる?

通勤手当の代わりに、在宅手当? 家で仕事をするための環境作りで様々なことが必要になります。そこにお金をかけないと十分なサポートになりません。健保が提供するのも、スポーツクラブ、健診、保養所などが、自宅でのフィットネス、遠隔医療、もしかすると保養所代わりは有料配信サービスの補助とか、出てくるかもしれません。

対顧客活動はどうなる?

お客様と対面の活動ができないのは大きなプロセスの変化です。いかにデジタルでパーソナライズな関係維持をするか、は益々重要になります。オンラインでのマインドシェア維持向上が大きな目標になってきます。データやAIの出番はますます加速しそうです。VRのプレゼンやロボット営業もまじめに考える対象になるのではないでしょうか。また、ここへきて、デバイスとしてのPCの接点が見直される機運が高まるでしょう。移動していないわけですから、従来のモバイルファーストばかりでないインターフェースが望まれます。

採用活動はどうなる?

へたをすると面接もすべてオンライン、入社後も実物に会うことはない?なんてこともあり得ます。直に会うことで全体的な雰囲気を持つ人がどうしても高評価になるというのがありましたが、そういうところよりも、「できそうかできなさそうか」をいかに測るかになるでしょう。ある意味シンプルです。本当の意味でのダイバーシティが進むと思います。

人材育成はどうなる?

とにかく「背中を見て育て」的な徒弟制度のようなものは厳しいでしょう。OJTも画面ごしだといまいちぱっとしません。日常業務のなかに、日々の振り返りや課題出しを入れるなど、習慣化するものを何か入れる、学習塾の振り返りのノートのようなものが有効になると思われます。

マネジメントはどうなる?

そうすると一方で、マネージャーはどうすればよいのか? それこそ管理能力は問われるでしょう。課題を出すなら、自らがしっかりそれをコツコツとレビューするという習慣がないといけません。離れているからこその、個々にあわせた目標設定と小まめなマネジメントはこれまで以上に時間をかける必要があるでしょう。

 

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在宅が普通になってきて数週間。現時点で思いつくものを挙げてみました。

これからもっと様々な視点で、「あ、これはこうならないといけないな」が出てくると思います。

状況というのは3か月も続けば、それが普通になります。ただ「当社は出社禁止にしました」でうまくいくほど企業も人も完成度は高くありません。「だとしたらどうすればよい?」を常に考えていくことが、経営層、マネジメント層の大きな仕事になってきます。

「ピンチをチャンスに」とにかく今はこれを、一日に何回も唱和するくらいでちょうどいいのではないでしょうか。

当たり前になるかもしれないと思いつつも、早く収まってほしいという気持ちはやはり一番です。実際に苦しんでおられるお客様もたくさんおられるのが、本当に心苦しい。

経済活動の視点では、適応がキーになりますが、一般市民の視点では、とにかく早く、安全で平和な日常を取り戻せるようになることを祈るばかりです。

 

記事を書いた人

横山 彰吾