2017.08.28

グローバルCRM実現で必要となる3つの視点(前編)

ある一定規模の企業にとって、グローバルでのCRM実現は、もはや当たり前の時代になっています。

グローバルでCRMを実現するために、システムをどのようにグローバル展開していくか、とりわけプラットフォームをどうするかという議論は、CRMシステムのクラウド化が進んだ2000年代半ばから今まで続く、古くて新しいトピックと言えるでしょう。

選択肢としては、1つのプラットフォーム上でグローバルの全ユーザにオペレーションさせるか、各国(各エリア)ごとのプラットフォームでユーザにオペレーションさせるか、大きくこの2つに分かれますが、どちらを採用するかはそれぞれの企業ごとに検討する必要があります。

本コラムの前編では、グローバルでCRMシステムを展開する際のプラットフォーム検討のポイントを提示、後編で想定されるケースと展開パターン、最適な展開を考える上でのヒントを提示したいと思います。

 

【グローバルCRM実現のためのプラットフォーム検討ポイント】

どの企業の場合でも、少なくとも以下の3点は検討が必要になるポイントです。
1. 事業特性
2. グローバルでのオペレーション標準化の必要度合い
3. 各国(各エリア)の規制(特に個人情報関連)

3つの検討ポイントについて、具体的に見ていきましょう。

 

【検討ポイント1:事業特性】

どのような顧客を相手にするビジネスか、により最適なCRMやシステムのあり方も変わってくるため、事業特性(B to B/B to C、顧客がグローバルアカウント/ローカルのみ)は、最初に検討が必要なポイントです。

例えば、B to Bでグローバルアカウントがメインであれば、情報共有の観点から考えると1プラットフォームが良いでしょうが、同じB to Bでもローカルの顧客のみしか相手にしない事業であれば、グローバルでの情報共有の必要性は低く、必ずしも1プラットフォームである必要はないでしょう。

事業特性を踏まえたプラットフォームを選択しグローバル全体でCRMを最適化しましょう。

 

【検討ポイント2:グローバルでのオペレーションの標準化の必要度合い】

グローバルCRMの場合、システムもグローバルで展開していくことになるので、そのシステム上でどのような業務をどのように行なうか、オペレーションをどこまで標準化するか、というのも検討が必要です。

ガバナンスの効かせやすい1プラットフォームの方がオペレーションは標準化しやすいと言える一方、1プラットフォームの場合は、どうしても標準化できない各国(各エリア)固有の業務をいかに吸収していくか、本社HQと各国(各エリア)の間で調整が難航するケースも少なくありません。

 

【検討ポイント3:各国(各エリア)の規制(特に個人情報関連)】

グローバル展開であるが故に考慮しなければならないのが、時代に合わせて新たに制定される各国の規制群です。特に、CRMシステムは顧客データが中心になるため、個人情報に関する規制への対応は必要不可欠です。

例えば2015年のロシア保護法改正や、2016年のEU一般データ保護規則制定(2018年に発効)、2017年の中国サイバーセキュリティ法制定などにより、個人情報を含むデータを国外に持ち出すのが難しくなっており、違反した場合の罰則も厳しくなる傾向があります。

また、個人情報ではありませんが、証券業界におけるEU金融商品市場指令の改正(2018年に発効)など、業界固有ではあるもののグローバルでオペレーションに影響を及ぼす規制というのもあります。

個人情報関連を中心に各国規制の動向と、それに合わせプラットフォームと体制をいかに最適化していくかが、グローバルでCRM実現していく上では避けては通れない課題となっています。

以上がプラットフォーム選択時に検討すべき主なポイントですが、次回後編では、筆者自身のグローバルCRM展開プロジェクトでの経験も踏まえ、上記の観点でグローバルCRMプラットフォームのパターン化を試みたいと思います。

お楽しみに!

記事を書いた人

野中 翔