DX銘柄2020 アサヒグループの取り組み

こんにちは!DX Labの近藤です。

前回のブログでは、DX銘柄選出企業の総論についてお話しました。今回は企業をピックアップして、どのような取り組みを進めているのか掘り下げていきたいと思います!
今回は、アサヒグループホールディングスをピックアップしました。

 

DXの位置づけ

アサヒグループでは、経営理念である”グローカルな価値創造経営”を推進するため、
①稼ぐ力の強化、②新たな成長の源泉獲得、③イノベーション文化醸成を中期経営方針としており、これらを達成するための成長エンジンとしてDXを位置付けています。
ゴールから施策をブレイクダウンして体系化した、ADX(Asahi Digital Transformation)戦略モデルの下に、計画的にDXを進めているそうです。

 

Digital Experience Platform

各取組の中で、私が気になったのはDigital Experience Platformの構築プロジェクトです。これは、エンゲージメントマーケティングの思想に基づき、One to Oneマーケティングのためのデータ分析基盤を整えるプロジェクトです。

元々、アサヒグループはマーケティング戦略と絡めた製品開発が得意な企業でした。著名なのは、スーパードライですね。消費者の好みの変化を敏感に察知し、ビール界隈で「辛口」「キレ」といった新たなポジショニングを開拓しました。また、コンセプトの一貫性を重視し、広告宣伝やパッケージ開発にもこだわった結果、ビール市場でのシェアNo.1を獲得しました。
近年ではデジタルマーケティングにも力を入れており、SNSなどのメディアを活用したコミュニケーション設計に加えて、データ活用にも力を入れています。

Digital Experience Platformプロジェクトは、国内のグループ会社で保有している顧客データをグループ横断で活用して、そこから消費者行動を分析・蓄積することで、より消費者のライフステージに寄り添ったコミュニケーション関係を構築することを目的としています。
また、分析結果をもとにエンゲージメントの高い顧客接点を実現するために、AIやXRなどのテクノロジーを活用するそうです。

消費者行動を正確に捉えてマーケティングや商品開発に活かす戦略は、まさにアサヒグループの真骨頂ですね。
また、テクノロジーやDXという言葉ありきで進めて、結局終着点が分からなくなっているケースも見かける中、アサヒグループはビジョンが明確で一貫性を持ち、DXやテクノロジーをあくまでも実現するためのツールとして位置付けているところが非常に素晴らしいと思います。

 

横断的なデータ活用の課題

グループ横断でのデータ活用となると、データ管理や消費者からの許諾など、ガバナンスの問題が出てきます。後々グローバル展開を想定しているようであれば、それも視野に入れた戦略の組立が必須になります。特に、GDPRやCCPAなど、地域特有の個人情報保護規制は避けては通れない問題ですね。
戦略を立てる上では、運用・リスク・ユーザーそれぞれの観点から要件を洗い出して落としどころを見つけないと、どこかで歪みが出てきてしまうので注意する必要があります。
もっとも、ビジョンが明確なアサヒグループなので、ガバナンス対応も抜かりなさそうですね!

 

現在、コロナの影響で業務用ビールの販売が思わしくない状況で、元々ビールの売上高比率が高いアサヒグループにとっては苦しい局面かもしれません。しかし、顧客一人一人を大事にするためにチャレンジングな取り組みを続けているアサヒグループであれば、打開策を見つけられることでしょう。

 

それでは、次回もよろしくお願いします!

記事を書いた人

近藤 明香里