コンサルタントと研究者に共通すること

初めまして、今江です。
私は大学6年間、生理学研究に没頭し、就職してからは製薬会社で処方研究を行っておりました。

コンサルタントとは違い、チームで協力してプロジェクトを推進するといったことはあまりせず、個人で黙々と進めていくことが多いです。また専門職であるため、コンサルタントのように様々な分野に幅広く関わることはありませんでした。

大きく違うように思える研究者とコンサルタントですが、実は仕事に対する考え方や進め方には共通項があり、今回は下記2点についてお話します。

1つは研究課題の見つけ方、もう1つは研究結果に対して信憑性を高める努力の2つです。

 

1.研究課題の見つけ方

現在私が関わらせていただいている仕事では、クライアントから悩みという大きなテーマは提示されるものの、その仮説検証はある程度お任せいただいています。社長からよく言われることの1つで、ストーリーラインをまず初めに作る、ということがあります。他社との比較や世の中のトレンドからある一定のルールを見出し、もしこうならこの結論になる、といった仮説~見せ方を含めた必要データの精査~結論の一連の流れをまず初めに仮定として作成するということです。

これは研究活動における課題の見つけ方の方法とよく似ており、これまでの経験がよく発揮できるポイントなのではないかと考えています。

研究活動の場合、始め方は大きく分けて2パターンあるのではないかと思っています。1つは研究室の教授からテーマを指定されるパターン(学部生はこちらの方が多いかも)、もう1つは所属している研究室で研究している大きなテーマに沿って自らテーマを設定するパターンです。

私の場合、後者のパターンではまず周辺論文を読み漁って知識を深めるところから始めます。そうしているうちに研究対象に対するいくつかのルールが見えてくるのです。

例えば緑茶に含まれるカテキンが肥満抑制に効果を示した、という論文があります。その他にもコーヒーに含まれるクロロゲン酸が同様に肥満抑制に効果を示した、という論文見つけたら、カテキンとクロロゲン酸の共通項であるポリフェノールが肥満抑制に効果を示すのでは、というルールを見つけることができます。それなら他のポリフェノールでも同様に肥満抑制効果を示す、といった仮説をもって研究を始めることができますよね。あとはその仮説を証明するために、どんな手技を習得し、最終的にはどんなデータを揃えれば発表できるかを組み立てていきます。

これは単純な例で実際にはもっと考慮することはありますが、コンサルタントという仕事でもこの方法を応用することができると思っています。

 

2.研究結果に対して信憑性を高める努力

コンサルタントをしていてまずぶつかった壁の1つで、クライアントの方はその道何十年ものベテランであるため、当然ながら私の方が経験値は乏しいという点です。その差をどうやって埋めるのかというと、仮説の組み立てを慎重に行い、検証プロセスの精度を限りなく100%に近づけることなのではないかと思っています。

研究活動でも、仮説を立てて結果までのストーリーラインができたらすぐにでも実験を始めたいところですが、実際にはそうはいきません。なぜかというと自分の手技が100%の精度ではないからです。仮に精度60%程度の手技で結果が出たとしても、自信をもって真であると世の中に発表できる結果ではありません。実際私も手技の精度を高めるために半年以上の時間を費やしたものがありました。

なんとか論文や学会で発表できたとしても、発表の場には何十年もその研究を極めてきた研究者もいて時には厳しい質問も受けると思います。これは当然のことで、発表の場では研究者の年齢やバックグラウンドなどは関係なく、皆同じ土俵に立って真実を解明しようとしているからです。

結果の真実性は立場に関係なく100%でなければならず、そのためにはまず手技の精度を100%に限りなく近づけるしかないのです。別の見方をすると年齢や経験問わず、仮説の組み立てを慎重に行うことと手技精度を100%にすることで、憧れの研究者と同じ土俵に立てるということです。

コンサルタントの仕事をしていて思うのですが、研究同様、結果が100%真であるというということは誰にも言えないですよね。ただその結果を限りなく真に近づけることはできます。コンサルタント関係の本を読んでいると必ずと言っていいほどロジカルシンキングという言葉が出てきますが、これも結果を真に近づけるための手技の1つなのではないでしょうか。

 

 

研究者とコンサルタントで大きく違うところは1つの分野を極めるか、否かというところだと思います。これまで1つの分野を極めてきた私にとって、短期間で幅広い分野に詳しくなれるコンサルタントという仕事はとても新鮮で楽しいポイントでもあります。今後も何か気づいたことがあれば共有したいと思います。

記事を書いた人

今江 亜利沙