ホワイトボードの使い方:その2

こんにちは。代表の横山です。
今回はホワイトボードの使い方の続編を書きたいと思います。
その1では、ただ書き残すだけではなくて、全体感のイメージを持って、個別の記載は書く場所をよく考える、ということを言いました。
今日は、その「個別の記載の仕方」についての留意点です。
 
こういうシーンを経験したことはないでしょうか?
議論が活発になってきて・・・、
「じゃあ、ここで出た話しをホワイトボードに書いていこう」となり、、
Aさん「よし、じゃあ、私が思うに、今ユーザーはこういう人だから○○で、△△で・・・」
Bさん「あ、自分はこう思うんですよね。先日こういうユーザーがいて、××で△△で・・・」
Cさん「いや、ちょっと違う立場ですが、私は、、云々かんぬん・・・・」
ファシリテートする人は、みんなの意見に耳を傾け、必死で追いかけてホワイトボードに書き続け、余白がないくらい一杯になりました。
そこで一言。「・・・・・・・さあ。どうしましょうか?」
Aさん、Bさん、Cさん:「・・・・・・・・・・・・・(誰かしゃべらないかな。。)」
 
発言が記録として残ることはいいことです。ですが、これは議論のための使い方ではなく、「議事録」的な使い方です。
これではもったいないので、もうひとつステージを上げたいところです。
 
一方で、私が見て「この人うまいな~」と感じるケースを、同じシーンに当てはめてみます。
(Aさんの話を聞きながら、)
「なるほどなるほど。この人をぺルソナYとして、Yさんは○○がやりたい人、と置いてみましょう。」⇒話を翻訳してその内容を書く
「そして、具体的には、Aさんの表現を借りると、○○で△△という特長があって、、」⇒翻訳の下に少し小さく、「例)○○で△△。」
そしてAさん「そうそう、ユーザーYさんは○○がやりたい人なんだよ。私はそれを言いたいの!」
(続けてBさんの話でも似たようにまとめて、、)
(そしてCさんの話が出てきたときに、、)
「あ、それはさっきのAさんの話と同じですね」⇒またAさん発言の翻訳の下に小さく、Cさんの言った「云々かんぬん」を書く。
その結果、
Aさん、Bさん、Cさん 「要するにユーザーのパターンは2つあって、それぞれこういうニーズがあるってことなんだよねー。そう。言いたかったことはこういうこと。さあ、もうちょっと深堀りしていこうか!」
ということで、次のステップに無事に進んでいきました。
 
そうです。この展開ができるファシリテータは、”話を前に進められます”。
要するにここでのポイントを一言でいうと、「出てきた話をそのまま書かない」です。
正確な議論のためには、”Fact Finding”は重要ですが、目的によります。それに、Factとは何でしょう?誰かが言った事実がFactなのか、その人が言いたかったことがFactなのか?
 
ディスカッションですから、話し手は自由に発言します。そして、その人たちの立場やモノの見方によって、話の粒度は異なります。これは当たり前です。そして、これを「与件」と考えなければなりません。
もうひとついうと、話し手が表現がうまいとは限りません。言いたいことを表現できる人、できない人がいます。これも「与件」です。
そんななかで、出てきた話をそのまま書き続けると収拾がつかなくなるのは目に見えています。
 
大事なのは、一呼吸置いて、「つまりこういうことだな」ということを書いてみる。
前述のAさん発言のまとめのように、一般化した枠組みでいうとこうで、具体的にはこうというように、整理や議論が可能な粒度に仕立て上げる。
これだと、別に話し手のいうことを却下していることにもならないですし、むしろ表現が上手にできないところを補うことにもなります。
もうひとついいことは、前述のCさん(この人も表現下手)の話のように、「言い方は別だけれども同じ話」という括りができたりします。
そうすると、シンプルに構造化できたり、ポイントがより絞られて分かり易くなったりします。
言いたいことをいってストレス解消することや議事録作りがゴールという訳ではないはずです。一語一句残すことより、数多くの情報のなかから、短時間で適切なアウトプットをすることが重要です。
 
ただ書き手は大変です。やることは「書く」という手で行うことよりも、表現しなおすという「考えること」への比重がぐっと上がります。
それも書きながら、話し手に確認しながらなので、結果、口で検証しながら「手で考えている」という感覚になることでしょう。
こうなるとホワイトボードに向かっている人は受身ではなく、リードしているという状況にかなり近づきます。
議論のなかで拾い上げた話から、ペルソナYの話、Zの話、、ときたので、さらにXがあるはずだ、となれば、「たとえばXさんみたいなタイプもあるんですかね?」という投げかけをして網羅性を上げて議論を活性化させることもできます。
もう書き手が半歩先になっている状態ですね。
もうだいぶ余裕を感じながら仕事ができるはずです。何か発言があると、「(やっぱりそれが出たか)」となり、慌てることなく対応できます。また、ちょっと気になることがあれば、「(次はこの話をふって、議論で抜けている部分を引き出すか)」という戦略的な投げかけも出来てしまいます。
参加者は気づかない場合もありますが、なぜか話にリズムが出てくる。これは完全にホワイトボード使いのファシリテータのしわざです。ここまでくるとアスリートでいう「ゾーン」ですね、笑。
 
以上、ホワイトボードへの記載は、単純にそのまま書かずに、話の展開を念頭において、適切な粒度に翻訳するということについて説明しました。
そしてそれが出来ているかのチェック方法は、「手で考えている」という感覚があるかどうか、です。
どうでしょう。普段からやれていますか?それとも難しいなあ、と感じますか?
 
ホワイトボード使いは、すべては訓練、勇気をもって「やってみる」ということに尽きます。何もしない人より、やってみて失敗を繰り返す人の方がずっと期待できます。(毎回同じ失敗というのは除きますが、笑)
この話は、発言の真意をつかむという洞察力や、議論のポイントに気づく仮説立案力、粒度を揃えたりエッセンスと事例を整理・構造化できるコンセプチュアルスキル、こういったスキル要素が重要となります。逆にいうと、日常的にホワイトボードを使っているだけで、これらスキルの向上につながるとも言えます。
面倒くさがらず、是非ためしてみてください。
 
もうあと、2,3回、頃合いをみてホワイトボードの使い方の続編を書いていきたいと思います。
今回も読んでいただき、ありがとうございました。

記事を書いた人

横山 彰吾