ホワイトボードの使い方:その3

このテーマも3回目になりました。
1回目は、話の「全体感」を意識すること。2回目は、議論が進むような「表現」を用いること。を書きました。
今回は、「ポイントがずれないような書き方」について述べたいと思います。
 
先日もある現場でこんなことがありました。
とあるMAのプロジェクト。お客さんと一緒にマーケティング施策を考えてきたのですが、それらがどうしても単発のものになってしまい、目的を見失いがちになってきました。
そこで、改めて、顧客の気持ちの変化と行動、いわゆるカスタマージャーニーをまずは描いて、その後で施策を位置付けていこう、と仕切り直しをすることになり、机を囲んでスライドを見ながらの「顧客のことを話し合う」議論が始まりました。
最初のうちは、「(ペルソナ)Aさんは、このときはまだ興味がなくて・・・」とか「ちょっと関心が出てきて・・・」というまっとうな話だったのですが、誰かがここで「やっぱりリタゲでしょう」という施策の話をしだしたところ、それを皮切りに、「素材はあるから掲載はすぐできる」、「サイト来訪者は”この人”って特定できたっけ?」云々、、、
完全に主旨から外れて、またもや個別の施策、それも出来る出来ないのようなテクニックの話に、大きくそれていってしまいました。
こうなるともう皆好き勝手言ってしまい、元に戻すのは大変です。もともと施策の話をしたかったんでしたっけ??
 
テーマは違うかもしれませんが、よく見る光景ではないでしょうか?
目の前で話だけが流れ続け、瞬間瞬間の言葉に対応して議論をした気になってしまう。しかし本来の目的とはかけはなれた話になり、結論はまたもや持ち越し。。
 
要するに会話というのは、時間とともに流れていってしまうのです。共有できるのはそれが聞こえた瞬間だけで、その前の文脈は、参加者の頭の中(つまりそれぞれの意識に重みづけされた記憶)にしかないので、人によって残っていたりいなかったり、ぶれたりします。だって、さっきまでの話が目の前に残っていないから。
そこで「ホワイトボードの出番」なのですが、、、かといって、目立ったキーワードをホワイトボードに書いていくやり方だと、「話だけ」で進めるときと同じことが起きてしまいます。
 
ではここで現場を乗り切る解決策を。
まず一つ目。やはり大事なのは「お題」。
まず、今何の話をしようとしているのか、をホワイトボードの真ん中上あたりに、ドンと書いておくことです。
このケースでいえば、「Aさんの気持ちの変化と当社との接点は?」。こんな感じでしょうか。
とりあえず、一番目立つところに書いておけば、「えっと、今この話ですよね。」と、流れる時間を止めることができます。
 
もうひとつは、「主役と脇役の区別」です。
今回は主役は「顧客の気持ちの変化と行動」です。そして、脇役に、ところどころ顔を出す「施策」のようなものがあります。もっというと、発散して出てくる定番で、その施策の実現性とか、誰がやるか、みたいなこともあります。それらみんな脇役です。
そもそもが、なぜこの施策なのか?が不明確だから始めた議論。そのWhyの部分が今回は主役です。
それを平面で明確に分ける必要があります。イメージとしては、お題が一番上にあって、その下ホワイトボードの3分の2から4分の3くらいは主役のゾーンとして使う感じです。
そのまま脱線せずに、そのゾーンでジャーニー的なものが描かれて完結すれば、まあベストです。
 
・・・しかし、必ず脱線するシーンがあります。
そのときに、出てきた話を全部拾って書きだすと、前述のようにあらぬ方向に進んでしまいます。かといって、「いや、今はその話ではないから」と言ってしまうと、おそらく勢いが削がれ、モチベーションも下がり、シーン、、、とします。
なので、出てきた施策の話は、脇役ゾーンに入れてしまうんです。
 
「あ、脱線話(この場合、施策の話)が出てきたな」と思ったら、ホワイトボードの上から3分の2に横線を入れてしまいます。
そして、施策系の話は、線の下の「脇役ゾーン」へ。それも上の主役ゾーンで関係するところとしっかり線で結びます。
そうしておけば、
・なぜその施策の話が出てきたか?
・目的は何なのか?
・そもそものお題のどの部分の話か?
が分かり、その施策単体で流れていくことなく、しっかり前後の文脈も共有して議論を進めることが可能になります。
内容によって縦横とかはどうでもいいので、出てきた話を「分けて」「関連づける」ことです。
 
こうやって、ただただ流れていく言葉をそのままにせず、意味あるものにすることが、ちょっとしたホワイトボードの使い方の工夫で可能になります。
いかがでしょう。
とにかく、話の意味に沿って位置を大事にすること(その1での説明)と、言われたことをただ書くだけにしないこと(その2で説明)を応用してうまく仕切れれば、かなり効率的に、最短距離で結論に至ることができます。
 
ホワイトボードを使う役割の人は、
・議論の参加者の「頭の中を代弁している」。
・それも、「言葉ではなく意味のレベル」で。
・議論を、(ホワイトボード面の)空間だけでなく、「時間でもコントロール」している。
そういう意識を持つことが大事だと思います。
 
5人集まっても1人分以下のアウトプットしか出ないか、5人分のアウトプットをしっかり出せるか、さらには5人の相乗効果から人数以上のアウトプットを出せるか、それはファシリテータの力量にかかっているといえるでしょう。
そういう人が1部署に1人、1チームに1人でいいので、いてもらえるようにすることが組織の生産性を飛躍的に向上させると思います。
是非企業内でそういう人を発掘してもらいたいです。
 
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

記事を書いた人

横山 彰吾