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D2C時代における顧客体験のありかた<前編>

消費行動は生活や価値観とともに変化していきます。近年ではIT技術の急激な進歩に伴い、企業と顧客の間だけでなく、顧客同士の繋がりも多様化しています。特に、SNSの普及は消費行動に大きな影響を与えており、Dual AISAS(2015年/株式会社電通)、ULSSAS(2019年/株式会社ホットリンク)、パルス型消費(2019年/Google Inc.)など、さまざまな団体や企業からSNSの影響等を受けて変化した消費行動のモデルが提案されています。

また、EC(電子商取引)が普及して久しいですが、昨今ではD2C(Direct to Consumer)の導入や立ち上げもトレンドとなっています。これは、企業と顧客との間の双方向コミュニケーションの手段が多様化したことによりデジタル上でのファン獲得の機会が増えたことに加えて、顧客体験をコントロールすることが可能になってきたことに起因していると考えられます。さらに、COVID-19の影響による小売市場の混乱に伴い、大手メーカーによる自社ECの拡充も大きく広がりました。
D2Cが普及していく中で、どのように顧客体験を定義していくのか。D2C時代における顧客体験を設計する上で注目したいポイントを、前編後編の2編に分けて紹介します。

前編では顧客の消費行動に焦点を当てて、技術の発展に伴う顧客とのかかわり方の変化についてご紹介します。

次回: D2C時代における顧客体験のありかた<後編>

 

技術の発展と顧客体験の場

COVID-19の蔓延をきっかけに人々の生活は大きく変化し、それに伴い顧客の体験の場も変わってきています。これは、多くの人が実体験として感じているところかと思います。オンラインチャネルが利用される機会は増えてきており、ECと実店舗を併用して利用する傾向が強くなっています(※1)。さらに、これまではデジタルシフトは難しいとされていた高年齢層でもECの利用は急速に進みました(※2)。

今日まで、企業と顧客との接点はインターネットの歴史と密接に関わりあいながら変化してきました。1990年代初頭のオンライン上の接点は、一部のユーザがPCから企業情報のサイトやEメールを利用する程度でした。それに対して、現在では多くの媒体でユーザと企業をオンラインで繋いでいます。駅や大型商業施設にはデジタルサイネージが設置されており、最新の情報を場所と時間を選んで提供できます。また、スマートフォンのGPS情報等を利用して取得できる位置情報や、IoT家電を通した製品の利用状況などをデータとして管理できるようになり、より高度な情報やサービスの提供が可能となっています。さらに、スマートフォンの普及に伴い多くの人々がで常時インターネットにアクセス可能な状況となり、企業から顧客への一方的な情報提供だけでなく、SNSなどを通した双方向のコミュニケーションも実現しています。

このように変化する環境の中で消費行動も変化しています。不特定多数に向けた認知から始まるようなAIDMAに沿った購買行動のみでは、顧客の消費行動を想定しきれないのが現状ではないでしょうか。顧客は企業や顧客同士の双方向のコミュニケーションや、個人に最適化されたサービスに慣れています。企業は、このような環境における顧客の消費行動を注意深く考察し、製品やサービスに応じた体験を提供していく必要があります。

SNSの普及と変化する購買行動

さて、それでは現在、どのような消費行動が一般的といえるのでしょうか。冒頭で紹介したとおり、多くの団体や企業から新しい消費行動のモデルが紹介されています。すべてのモデルを示すことは紙面の都合上難しいため、冒頭に紹介するのは以下にそれらを簡単にご紹介します。

Dual AISAS(2015年/株式会社電通)

2015年に株式会社電通が発表した購買モデルで、同社が2004年に提唱したAISASを、SNSの普及などによるコミュニケーションの変化に合わせて発展させものになります。AISASはアクティブコンシューマーの出現に伴い、AIDMAに変わる消費行動モデルとして提唱されました。Dual AISAS Modelは、これまでのAISASを「『買いたい』のAISAS」という購買モデルとし、Attentionの周囲に回る情報拡散モデルを「『広めたい』のA+ISAS」として加えてたもので、消費者にとってプライベートなネットワークから得られる情報の価値を反映したものになります。(※3)

ULSSAS(2019年/株式会社ホットリンク)

株式会社ホットリンクが2019年に発表した購買モデルで、SNSの普及に伴い口コミなどのユーザがるくるコンテンツ(UGC)の影響を考慮したモデルです。同社は、ユーザ同士の関係の重要性に注目しており、SNSで良質なフォロワーを抱えることと、シェアされやすいアカウント基盤を構築し、自律的に集客や売上が上がっていく仕組みを作ることの重要性を示しています。(※4)

パルス消費(2019年/Google Inc.)

2019年ごろGoogle Inc.が提唱した買い物行動を示したものであり、明示的にも暗示的にもその商品サービス自体やそれに関わる周辺領域で発せられる行動変容につながるようなメッセージに、消費者が心理的に反応して行動することを示しています。同社は、パルス商品のメカニズムを「スマホなどで、商品やサービスに関わるさまざまな情報を自由自在に探索している途中で、とある商品に対して期待している潜在的なメッセージに「出会った」と感じたときに、直感センサーが発動し、購入を決定する。人々は意識的に、または無意識的にそういった「出会い」を求めて情報を探索し(explore)、ピンときて(hit)、決定する(decide)」と説明しています。(※5)

ユーザの情報発信の重要性

これらのモデルに共通していることは、SNSの普及に伴い、ユーザの情報発信の影響が無視できなくなったとうことです。これは、顧客体験を設計する上でも重要であり、ユーザが情報発信しやすいな環境や情報発信が必要になってくると考えられます。また、パルス消費に見られるように、明示的なアプローチだけでなく、暗示的にも行動変容につながるようなメッセージが影響していることを考慮して、ユーザの心理的な反応を促すために、精密な設計を行っていく必要があると考えられます。

 

 

前編では、顧客と企業を取り巻く環境が変わってきた中で、どのような消費行動がみられるのかについて、3つの消費行動モデルを紹介しました。消費行動の変化と技術の変化は表裏一体であり、適切な技術を活用しながら最適な顧客体験を設定していく必要があります。後編では、このように変化する環境の中で、「顧客体験をコントロールするとはどういうことなのか」を考えていきます。

 

次回: D2C時代における顧客体験のありかた<後編>

参考

  • [※1] コロナ影響下の消費行動レポート 第2弾 ~高まるデジタルシフトの重要性と応援消費に象徴される消費の価値観変化~ :https://www.smbc-card.com/company/news/news0001533.pdf
  • [※2] コロナ影響下の消費行動レポート~高年齢層のECサイト活用加速と変化する巣ごもり消費~:https://www.smbc-card.com/company/news/news0001527.jsp
  • [※3]“Dual AISAS”で考える、もっと売るための戦略。:https://dentsu-ho.com/articles/3100
  • [※4]ULSSAS(ウルサス)とは:https://www.hottolink.co.jp/service/method/ulssas/
  • [※5]瞬間的に買いたくなる「パルス消費」、衝動買いと何が違う?:https://www.thinkwithgoogle.com/intl/ja-jp/consumer-insights/consumer-trends/shoppersurvey2021/

(執筆者:舘野愛実)