【DXコラム2話目】 DXの成功に向けた人材戦略

デジタルトランスフォーメーション、通称DX、は現代のビジネスにおいてますます不可欠な要素となっています。しかし、DXを進める際に最も直面する課題の一つが、適切なDX人材の確保と活用です。この記事では、特にマーケティング担当者向けに、DXプロジェクトの成功に必要なスキルと戦略について分かりやすく解説します。

1.不足しているDX人材とは何なのか?

DXを推進するための「DX人材」とは、どのようなスキルや資質を持つ人材なのでしょうか?まず、DX人材が持つべき具体的なスキル要件を考えてみましょう。

1-1.人材不足の主な要因

DX人材不足の主な要因を考えてみましょう。DX人材不足は競争が激化し、適切なスキルを持つ人材を確保することが難しくなっていることや、組織内のカルチャーやプロセスの変革が難しいことが背後にあります。

1-2.DX人材の具体的なスキル要件

DXプロジェクトにおいて、DX人材が持つべきスキルは多岐にわたります。
一般的なITスキルとは別に下記のような専門的なスキルが必要となります。

・デジタルアーキテクト
 -関係者間の共同関係の構築をリードし、目的を実現するスキル

・データサイエンティスト
 -データを収集・解析する仕組みを設計・実装・運用するスキル

・サイバーセキュリティ
 -デジタル環境におけるサイバーセキュリティリスクの影響への対策を検討・実行するスキル

・ソフトウェアエンジニア
 -デジタル技術を活用したシステムやソフトウェアの設計・実装・運用をするスキル

・ユーザーエクスペリエンスデザイン
 -ビジネス、ユーザの視点等に沿った、製品・サービスのありかたのデザインを行うスキル

※参照リンク:経済産業省デジタルスキル標準
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/skill_standard/main.html

ただ、これらのスキルを一人で全て備えるのは難しいため、複数人で実現することが現実的です。
要は、「すべてを理解しているDX人材」は社内にいないが、「特定のスキルを持った」を持った人材を社内で集めることではできるということです。
私が関わってきたDX推進のプロジェクトでは、社内では気づけない人材選定をコンサルタントのようなベーススキルを持った人が入ることで問題は解決されてきていました。

もうひとつ、こういうスキル要件では表現が難しいものが隠れています。
冒頭で述べたように、組織内のカルチャーやプロセス変革を進めるための推進スキルです。DXでは組織を横断した仕事の進め方は避けられないので、そこを打破できるかどうかが大きな鍵となります。

調整力、コミュニケーション能力、人間的魅力、、など色々な言い方があると思いますが、要するに相手の立場を理解して最適解を考えられるというスキル・マインドです。「そういう人はたくさんいる」と言われるお会社も多いです。ですが、現実にこれだけDXがうまくいっていない状況を見ると、表面的なところと本質的なところの違いがあるのだと思います。

2.人材不足を解決するための戦略

DX人材不足を克服するためには、戦略的なアプローチが必要です。下記では、DXプロジェクトの成功に向けた人材確保と活用のための具体的な戦略について紹介します。

2-1.内部スキルの育成とトレーニング

組織内で必要なスキルを育てるためのトレーニングプログラムを導入することが有効です。社内トレーニングと外部トレーニングの組み合わせを活用し、従業員をDXに適した専門家に育て上げていきます。

教育という時間がかかる戦略だが、社内全体のDXレベルの向上にもつながるため会社全体でのDX推進のプロジェクトに向いている傾向があります。

2-2.外部リソースの活用とパートナーシップ

外部の専門家やパートナーと連携し、不足しているスキルやリソースを補完する。
戦略的なパートナーシップを構築することで、企業間での相互メリットをもたらしてくれます。

また、外部リソースを使用する場合、教育など時間の要するものがないため、プロジェクトの進行スピードは比較的速くなります。

さらに、少し進んだ世界を知っている人と仕事をすることは、大きな気づきや刺激になります。素直で吸収力のある人と協業する形にすると、強力な人材補完になる可能性があります。

2-3.グローバルな人材市場の活用

国際市場から優秀な専門家を採用することで、多様な視点とスキルを組織に取り入れることができます。国際的な視野からのアプローチは、競争力を高める鍵となります。

「日本のDX」ではなく「海外の最先端のDX」を推進できるため、他の日本企業との差別化を図ることができます。

こちらも外部リソース同様、「タイムマシン理論」で組織に刺激を与えるには有効です。海外はそもそものベース部分のギャップがありますが、そこは考慮しつつ、常に情報収集をしておくことも重要です。

2-4.オートメーションとAIの導入

AIなどのテクノロジーを社内に導入することで、繰り返し作業を自動化し、人材不足を緩和していきます。
つまりAI導入でITインフラを整備することで、社内のITリソースを確保することができます。
そうすることで単純作業や繰り返し作業にリソースをさかれていた「埋もれているDX人材」を発掘ができる戦略です。

2-5.カルチャーと働き方改革の推進

組織文化と働き方を見直し、魅力的な職場環境を整え、人材を引き付ける努力を行いましょう。働きがいのある環境は、優秀な人材の獲得と定着につながり、人材不足を解決することができます。

コロナ禍を経て、スキルのある人が企業をまたいで仕事をするスタイルも一般化してきました。本当に必要なスキルを見出すための会社側のしくみの見直しはこれから益々重要になると思われます。


5つの戦略を紹介させていただきましたが、この戦略のどれかを選択するのではなく並行して進めていく必要があります。
そこで必要となってくるのが「ロードマップ※」と言われているDX推進をするにあたりどのようなステップで進めていくか明確に要件を落とし込んだマップです。
※ロードマップの作り方や事例については、次回のコラムで紹介させていただきます。

しかし「人材不足」なのにこのような戦略を立てて推進していくのはとても至難の業です。
そのため、成功している企業様は弊社のようなDXコンサルティングを多く経験している企業に外注し、企業の状況に合わせた「ロードマップ」の作成から戦略実行までを外注するところから始めています。

まとめ

DX推進の成功に不可欠なDX人材の確保と活用においては、具体的なスキル要件を知ること人材獲得戦略が必要となります。DXの進化と競争力の向上への鍵は、正しい人材と戦略の組み合わせにかかっています。

次回はDX推進プロジェクトを進めていくために必要な「DX戦略策定の要点」について紹介させていただきます。
是非ご覧ください。

記事を書いた人

佐藤 誠一郎