• インタビュー

デジタルマーケティングが生み出す、ファン、サポーター、地域との新たな繋がり

利用サービス:
MA導入・活用 

クライアントデータ

ビジネスタイプ
B2C
社名
株式会社セレッソ大阪
業種
サービス
部門
マーケティング
規模
100名以下

※部署等は当時のものになります

  • 背景・課題

    コロナ禍でチケット収入が期待できなくなった状況下での、ファンとの関係性維持。

  • サービス内容

    選手・チームとファンの間をつなぐコミュニケーション施策とオンラインストアへの誘導。

  • 成果

    Jリーグ再開時のファンとの関係性維持への貢献と、社内のデジタルマーケティングの定着。

大阪府を拠点に、チーム設立以来、地域やサポーターと共に歩み続ける「セレッソ大阪」。サッカーJ1リーグでは、今シーズンも快進撃を続け、今、人気、実力ともにトップレベルのチームです。
そのセレッソ大阪様が、2018にJリーグのデジタル活用戦略の一環として、Marketoを活用したデジタルマーケティングへの取り組みをはじめました。ファンエンゲージメント獲得のために、積極的にMarketo活用をしてきたセレッソ大阪様ですが、MAの良さをより引き出して、さらなる活性化を図りたいということで、弊社がご一緒にお仕事をする機会をいただきました。

セレッソ大阪様は、Jリーグの一員という一面以外にも、ヤンマーグループの一員という側面もあります。今回はヤンマー様とセレッソ様のプロジェクトに弊社も参加させていただくという、それぞれ専門家が集まる形での三位一体型のプロジェクトでした。
既に2カ月間のプロジェクト期間を終え、今、活用フェーズに入っているなか、営業・マーケティングを長きにわたり先導してこられている、営業グループ グループ長の猪原様と、主担当である島田様、それからヤンマーホールディングス株式会社社長室スポーツビジネス推進室の西家様にプロジェクトを振り返っていただきました。

毎週状況が変わる「コロナ禍」の中での立上げ

このプロジェクトがスタートしたのは、2020年3月末。当初はスタジアムへの来場促進や、ファンを育成していくということに焦点を置いた施策を考えていましたが、予期せぬ新型コロナウィルスの感染拡大により、大きな方針転換を余儀なくされました。
MA活用の経験者として企画に携わった西家さんはこう振り返ります。「収益源で一番影響が大きいものがチケット販売なのですが、一番注力しようとしていた、ファンの育成から来場者を増やしていく施策ができなくなってしまいました。」

株式会社セレッソ大阪 島田様

「この特殊な状況下で、今自分たちは何をすべきかを一から考え直しました。その結果、試合を楽しみにしてくれているファンとの繋がりや関心維持をいかにしていくかということと、せめてオンライン販売は活性化していこうということで、方向転換をすることになりました。」当時、感染拡大がどのようになるか、全く先が見えないなか毎週状況を見極め、優先度を考え続ける繊細な舵取りが必要となりました。
さらにそれに伴って課題にも直面しました。
「最初にぶつかった壁は、“コンテンツがない”でしたね。出せるものって何だっけ?と、想定していたことと変わってしまい、どうしようかと思いました。ここで改めて、お客さんの立場になって何が欲しいか考えてみました。」と島田さんは言います。特殊な環境のなかで、期せずして、改めて顧客視点に立ち返るという本質的なところで知恵を出し合いました。

MAでできることを、ぎりぎりまで追求し続けたプロジェクト

本プロジェクトでは、終始リモートでの定例会を通じて、施策の細部の検討を繰り返しました。繋がりを維持するにしても、相手の心境によってどんなコミュニケーションだとうれしいか、グッズについても、どういう切り口で商品を選んでくれるのか、画面越しで白熱した議論が繰り返されました。
島田さんも施策検討段階で、MAに対するイメージを徐々に具体的にしていったようです。「選手別のグッズ訴求なども検討したのですが、買いたい気持ちになってもらってから提案するというように“段階的に進めるところ”を見て、MAってこういうものなのかとだんだん分かってきました。」「正直、今まで単発で数を追求していたのですが・・・。入口に立てたので、さあこれからだなという感じでした。」

ヤンマーホールディングス株式会社 西家様

弊社もこの限られた期間で「MAらしいマーケティング」をいかに伝えようか終始考えてきましたが、併せて、ヤンマーで本格的なリードナーチャリングを経験してきた西家さんからの刺激も多かったようです。
この「考えながら実行に落とし込んでいく」という推進力をもって、結果的に2カ月間で8つの施策(25個のコンテンツパターン)を行うに至りました。そのなかでも特に印象的だったものは何かを島田さんに伺ってみました。
「色んなところで耳にしていたオンライン販売の“カゴ落ち”をやっとできたことですかね。今も動かしていますが、毎日コンバージョンがあって、ずっと成果が出ています。」
プロジェクトのなかで猪原さんからも「意外と定番の施策をやってきていないので試してみたい」というリクエストをいただきMarketo社からのアドバイスも参考にしつつ限られた期間でできる方法をご提案しました。「ずっと、どうやればいいのかなと考えていたところ、実現策をステップを分けたご提案をいただきまして、“あ、こういうやり方があるんだ”とすぐに実行に移しました。」
はじめはステップ1として簡易的な方法でしたが、それだけでも目に見える大きな成果が生まれたようです。「そのとき教えていただいた次のステップに、今は進んでいます。最初の一歩を踏み出せたのは大きいですよ。」とのこと。日々、島田さんと西家さんで進化させているようです。

日々、“1%の動きを見逃さない”

活用フェーズに入った今、島田さんと西家さんが欠かさず行っているのが、「朝必ずデータを見ること」。どんなに忙しくても数字をみて、仮説が正しかったのか、次に何をすべきなのか、を確認しあいます。「数字をみて、ちょっとした変化を追いかけています。MAはメール送るだけでなくて、数字を見ながらトライアルエラーを繰り返す、業務そのものです。」
普段の業務になっているので、気にしていなかったようですが、改めてこの数字を見る有効性は島田さんも感じておられるようです。「ひとりだと難しいですね。やはりこういうことは続けることが肝心です。」「大事にしていることは、ほんの少しの動きでも無視しないことですね。必ずその背景には何かがある。」と島田さんは言います。
マーケターとして普段から意識されていることも聞いてみました。「とにかく、色んなメールを見ています。登録しているのは300通くらいでしょうか。海外のプロスポーツチームのものも常に見て、ベンチマークしています。」
弊社もこれまで多くの会社の案件に携わってきて、成功ための重要な要素である「データを見て、MAを使い続けること」をしっかり実践している姿を見てむしろ勉強になりました。今でも、毎月必ず新たな施策が生まれ続ける源泉はこういうところにあるのだと刺激になりました。

「スキル+環境整備」がMAの潜在能力を引き出す

ご担当者が高いレベルでデジタルを使いこなしている背景として、「伸び伸び仕事ができる環境」も影響していると思い、グループ長の猪原さんに、マネジメントの立場からのご意見も聞いてみました。
「放任主義かもしれません(笑)。彼が得意なところは分かっていますし、ツールも揃っているし、そのなかで人材育成の機会でもあるので、頑張ってもらっています。」「今だと、うまくいっているかどうかもデータで見れるので、任せることは可能ですね。」
チームの営業面全般を担当されている猪原さんが、信頼して裁量を与え、スピーディにできる環境を作っていることも大きいようで、日々新鮮な情報が頼りのデジタルの世界にフィットしたマネジメント体質だということがよく分かりました。
このように推進力のある頼もしいメンバーでしたが、一緒に働いたBAのメンバーの印象も聞いてみました。「今回は、毎週毎週、“来週(試合が)再開するかもしれない”という状況が続き、常にやりたいことが変化していきました。BAの皆さんは、それに対して一緒になって考えてくれたので助かりました。」とのこと。
「後で数えたら、当初の依頼よりも、コンテンツの数が増えてましたね(笑)」。と西家さんからもコメントをいただきました。弊社も2ヵ月で何かを残さないといけないと必死でしたが、必要なことをやっていく、という弊社のスタンスが伝わったようです。

デジタルマーケティングが与えた社内への影響

今回、MA活用が進んだことが社内的にも大きな影響を及ぼしたようです。今後の課題や展望について猪原さんに聞いてみました。「デジタルという観点での仕事を今回やってみて、オンラインショップやチケットなど、関連するところもよりよくしていかないといけないということも分かりました。」デジタル接点全般の再構築のきっかけになったことは間違いありません。
「今は8万人のエンドユーザーを対象に行っていますが、これを皮切りに、すべてのステークホルダーとの繋がり作りに活かしていきたい。ファンを増やすのはスポンサーにとってもメリット。そういう相乗効果を期待したい。」と力強く語っていただきました。

株式会社セレッソ大阪 営業グループ グループ長 猪原様

冒頭にあげたように、セレッソ大阪様はJリーグの一員でもあり、ヤンマーグループの一員でもあります。その観点で、外部からの見られ方に変化はあったのでしょうか?「Jリーグの方とも情報共有しながら進めています。メール配信を積極的に行っているというのは認識されていて、自分としてもリーグのなかで先行していきたいと思っています。」と島田さん。
「ヤンマーグループのなかでも見られる機会が増えました。スポーツビジネスなので一見華やかに見られがちなのですが…」「グループのなかでも、ここは意思決定のスピードなどがデジタル向きだと思います。本社にフィードバックできることも多いと感じています。」と西家さんはヤンマーの立場で語ってくれました。
日本のスポーツビジネスは、欧米と比べるとまだまだ発展の可能性を秘めています。顧客データの整備やデジタルマーケティングはそれを引き出す大きな武器のひとつです。セレッソ大阪様とJリーグ全体の取組みは、日本のスポーツビジネス全体の底上げに寄与するものとなりそうです。
また、この、常に進化し続けるセレッソ大阪様のモデルは、スポーツビジネスの世界のみならず多くの企業でも参考になる部分があるのではないでしょうか。仮説検証型のサイクルや、デジタル時代にあった人材育成など、ご本人たちが必要だと思ってやっていることが、普通は乗り越えられない壁だったりもします。
弊社としても改めてデジタルマーケティングの成功の条件を考えるよいきっかけになりました。今後もチームの勢いとともに、セレッソ大阪様が益々進化をしていくことを期待したいと思います。

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